小説 | ナノ





竜人族は年をとらない。
幼子が成人するまでに数十年。そこから老いていくにつれて見た目と年齢に差が出てくる。例えばエイトの母は見た目こそ若い女性だったものの、人間にしてみれば悠久とも言えるような時を生きていた。
人間の父と、竜人族の母。見た目は父の血を色濃く継いだらしく、エイトの耳は祖父であるグルーノのように尖ってはいなかった。しかし内面は違ったようで、エイトの見た目の成長は、17、8で止まってしまった。

エイトの周りだけ時が止まったような世界で、共に旅をした仲間や仕えていた主君、城での仕事仲間、旅先であったルイネロやユリマ、出合った頃はエイトより遥かに幼かったポルク、マルク……皆、天寿を全うしていった。人々が老いていく中で、自分だけポツンとそこに取り残されたような感覚。私のこと忘れないでね、とゼシカがくれたピアスだとか、ククールがくれた指輪だとか、ヤンガスがくれた腕輪だとかはずっとエイトの身につけられている。
成長が止まる前の自分を知る人物が、ついに三角谷のエルフと仲間のモンスターたちだけになった時、エイトは竜人族の里で暮らすことを決めた。それを伝えた時グルーノは喜んだ。竜神王は生活に必要な粗方の手配をしてくれた。
モンスターたちはよく遊びに来てくれたし、地上の話もしてくれた。エイトとて行こうと思えばルーラ一つで地上に行くことはできるのだが、モンスターたちが楽しそうに話すのを聞くのが好きだった。


そうしてまた数百年の時が過ぎた。不思議なことに、やはりエイトは少年の姿のままだった。いつしかエイトは竜神王の後を継いでいた。自分たちのように腕試しに来る者はいない。それほどまでに強さを求める者がいないというのは、世界が平和な証拠だ。しかし、退屈でもある。
祭壇の椅子に腰掛けて、ふわあ、とエイトは大きな欠伸をした。


いきなり、外から怒号と物音が聞こえてきた。驚いて目を見開くと、祭壇の戸が勢いよく開かれる。もつれ込むようにして入ってきたのは、三人の若者とそれを必死で止めようとする兵士たちだった。いいから竜神王に会わせなさいよ!と気の強そうな声がする。その声は、魔法使いの彼女に似ていた。

「いいよ、通してあげて。」
「しかし、よろしいのですか?」
「うん、最近暇だったし。いい運動になるよ。」
疲労困憊している兵士たちを回復してやり、若者の方に顔を向ける。鮮やかなオレンジの髪を揺らす少女と、銀髪の青年。彼らより年上であろう背の低い男性。見た目は違えど特徴や醸し出す雰囲気はそのままだ。思わず頬が緩むのが分かる。

「回復してあげる。全力でおいで。」
シャン、と久しく使っていなかった錫を地面に打ち付ける。ほぼ同時に地を蹴った三人に、久しぶり、と心の中で呟いた。


ずっとずっと待ってたよ

(110901)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -