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似鳥作品‖伊神×葉山

〜さくっとあらすじ〜
一度では懲りなかったらしい渡会さんが親がいないときを狙って伊神さんの家に押し掛けたよ!
不意に抱き寄せられ、耳元で「葉山君、ごめん、」と囁かれた。

「な、に…んむっ…、」
何がですか、と言いかけた口は最後まで言葉を発することなく伊神さんの口によって塞がれる。言いたくはないが、まあ、その、………キスを、された。

躊躇いなく舌を割り込ませようとしてくる伊神さんに必死で抵抗する。しかし、暫くして僕の抵抗も虚しく歯列を割って舌が咥内へと侵入してきた。あまり聞きたくはない微かな水音が聞こえてくる。

「ん……ふっ、ぅ…」
自分から出ているとは思えないような鼻にかかった甘ったるい声に顔が赤くなるのが分かる。いくら今は違うとは言え自分の初恋の人に見られている、ということは考えたくなかった。言うまでもないが柳瀬さんも然りである。

それにしても、この人はいつまでこうしているつもりなのだろうか。呼吸が上手く出来なくていいかげん苦しい。
火照る顔と反比例するように頭は妙に冷静だった。抗議の意味を込めて胸を叩こうと腕を上げるも、開いている方の手で器用に押さえつけられ実行に移すことは叶わない。しかしながら、僕の言わんとすることは伝わったらしく口が離された。浅い呼吸を繰り返していると、極めつけと言わんばかりに口から零れた唾液を舐めとられる。

「こういう訳だから、」
君と付き合う気は全くない。
自分の口に付着している唾液を指で拭い取りながら渡会に向き直ると、伊神さんははっきりとそう告げた。どういう訳ですか、とか、今僕にキスする必要はあったんですか、だとか言いたいことは沢山あったがグッと堪えて渡会へと目線を移す。渡会は信じられない、とでも言うように目を見開いて口に手を当てながら小刻みに震えていた。数秒後、堰を切ったようにポロポロと涙がこぼれ始める。

そりゃ泣きたくもなるだろう。自分の好きな相手がディープキスをしている場面を見てしまったのだ。しかも相手は男ときた。きっと彼女には恋人同士が見せつけているように見えるのだろう。…ダメだ、自分で言ってて気持ち悪くなってきた。


―――取り敢えず、これが僕のファーストキスだった、ということについては一切考えないことにしよう。


渡会の肩を抱き、慰め続けながらもさり気なく家の外へと誘導する柳瀬さんの手腕に感心しながら、僕はそう心に誓った。


(110127)



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