小説 | ナノ





痛、と声がした方を見る。ソファに腰掛けて裁縫をしていた彼は、目が合うとばつの悪そうな顔をした。
「どうしました?」
「あ、いえ、大したことでは……」
白魚のような指の先端、ぷくりと赤い玉ができている。不注意で刺したのだろう。ぞっとするほど鮮やかな血の赤に引き寄せられるまま細い手首を取って、筋になって垂れる血液を受け止めるように白い指を咥える。目を見開いて何かを言おうとするのも構わずにちゅう、と強めに吸い上げると、ひゃっ、と高い声が漏れた。
指を口に含んだまま見上げれば、恥ずかしかったようで顔を逸らされる。再び滲んできた血を丁寧に舐めとると、擽ったいのか、時折引き結ばれた唇から意味のない声が漏れた。ぎゅっと瞑られた目尻はほんのり赤く色づいている。そこに浮かんだ涙を指で拭ってやると、強ばった肩が大きく跳ねた。弾みで、繕っていた服が床に落ちる。伸ばされた手が布地を掴むより先に、空いた方の手で絡めとって、ソファに縫い止める。ぺろりと指の腹を舌でなぞると、抗議の色を滲ませた声は上擦ったそれに変わった。
「そんなに擽ったいですか?」
努めて優しい声で問いかける。ややあって、蚊の鳴くような声でばか、と返された。

(130713)



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