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【クリ←アリ】
「姫様もいつか、お嫁さんになるんですよね」コロシアムの中央に設けられた祭壇で愛を誓い合う男女に目を遣ったまま、クリフトが言った。「考えたこともなかったわ」「あはは、姫様らしいです」眉を下げて笑う横顔を見ながら思う。いつか来るその時、隣にいるのが貴方だったらいいのに。

【クリ←アリ】
『病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しい時も、これを愛し、これを敬い、これを助け、二人共に歩み続けることを誓いますか?』司祭服に身を包んだクリフトが朗々と言葉を紡ぐのをぼんやりと聞く。隣にいてほしかった彼は、私の目の前でよそ行きの笑顔を貼り付けていた。

【ピサロとクリフト】
呪文を封じて、五感を狂わせる。たったそれだけのことで動けなくなった彼が、世界を恐怖に陥れた魔王だというのだから、笑うしかない。手にした小瓶の栓を抜くと、眼前の顔が嫌悪の色に染まる。清められた水が瓶の中でとぷりと跳ねた。ねえピサロさん。強さって、腕力や魔力だけじゃ計れないんですよ?

【勇クリ】
この闘いに勝ったらキスしてほしい。魔王の成れの果てを前にして馬鹿げた台詞を吐いた彼は、至って真剣なようだった。乱暴に腕を引いて半開きの口に唇を押し当てると、呆けたような顔と目が合った。前払いしてやったんです、死んだら許しませんからね。眼前の臆病者に向かって心中で毒吐く。

【勇クリ】
切り揃えられた深い藍色がさらさらと揺れる。掬い上げて唇を落とすと、擽ったいのか「ひゃっ、」と上擦った声がした。「え、ソロさん、何ですか?」「いや、髪に葉っぱついてたから。」するりと口から滑り落ちた嘘をあっさりと信じた彼が、くるりと踵を返す。今はまだこのままでいい。



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