小説 | ナノ





みず、と呟いた戦士が部屋を出て数分。戻ってきた彼は、何故か僕のベッドで寝ていた。寝ぼけて間違えただけらしく、程なくして規則正しい呼吸音が聞こえてくる。当然のごとくベッドはシングルで、ぴたりと重なった背中からは戦士の体温が伝わってきて。据え膳食わぬは、なんて言うけどさあ。

帰ってきても、勇者さんはまだ起きていた。悪戯心が芽生えて、ベッドに潜り込んでみる。分かりやすく強ばった体に吹き出しそうになるのを堪えて、聞こえてくる呟きに耳を澄ませると、いやでもやっぱりダメだよなあ、とか何とか。葛藤の末、結局手は出さないらしい。男の恥ですね、勇者さん。


シングルとツインの二部屋を取ってしまったことに気付いたのは、チェックインを済ませてからだった。横から僕の手元を覗きこんだルキが「ドジだね」と笑う。自分の鍵を取って階段を上っていくルキの姿を横目で見ながら入った部屋には案の定二つのベッド。隣が埋まる日が、一日でも早く訪れますように。


ロスとずっと旅をしてきて分かったことが二つある。一つは不意打ちに弱いってこと。もう一つは、寝たフリがそんなに上手くないってこと。いつかのようにベッドに潜り込んできたロスに向き直り、腕を伸ばして引き寄せる。相変わらず隣のベッドは空いているけれど、こんな空き方なら大歓迎だ。

「前もこんなことあったよね」「…覚えてません」「そっか」くすくすと笑うアルバには全て見透かされているような気がした。何だか癪に障って、目の前の額に思い切り頭突きを食らわせる。無言で額を押さえてうずくまる姿を見て溜飲を下げた。俺より優位に立とうなんて、アルバの癖に生意気なんですよ。

(130325)



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -