01


「好きです、付き合ってください!」
大学の広いキャンパスの中にある洋風の庭園。
その一角に呼び出されたと思うたら。

……またか。
大学に入って既に2年と半年以上。今日で何度目になるんやろうか。

「ごめんな。俺好きな人、いてん」
何十回と違う女の子たちに繰り返してきた自分の想いを伝えれば、目の前の女の子は大きな目を瞠って、その端に涙を溜めた。

これやから、嫌や。
悪いことをしてる訳やないのに、無性に申し訳ない気持ちになる。
ちゅうか、もう何度もおんなじような告白劇を繰り返してきてるんやから、ええ加減キャンパス中に俺には好きな子いてるって噂が広まってくれてもええのに。

「いえっ、聞いてくれてありがとうございました……!」
彼女の眦に溜まるそれを拭ってやろうと指を伸ばせば、一歩引かれて頭を下げられて、そのまま彼女は走り去った。

「……ふぅ」
深い溜息が漏れる。
今回の子は聞き分けがええ子で助かった。
以前、好きな子いてもいいから付き合って、と懇願されて付き合うた子も何人かおった。
けど、結局俺が彼女たちに靡かんとわかると、平手を食らわされて別れるなんてことが何度があったから、そういう手合いは正直苦手やったりする。

最初から好きな子いてる言うたやんか。

その子は俺が初めて好きになった子で、ある日突然目の前から姿を消した。
別れようと言われた訳やないから、今でも俺の心ん中には、その子がいてる。
連絡をとろうにもあの頃はまだケータイすら普及してなくて、引越し先もわからんかったから、あれから1度も会うてへんけど。
それでも、俺はずっと好きなんや。


「なぁ、夕妃。今どこにおんの?」


空に向かって投げかけた問いは、冷たい風が攫って行った。




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