Jealousy1/2
青すぎる空と灼熱の太陽。
俺が3年になって、早3ヶ月。
それはつまり桜架との遠恋が始まった時間とイコールやった。
「っしゃあっ!」
「コシマエに勝ったでーっ!!」
はしゃいどる部員らから数歩遅れて会場の外に出ると、奴らが不自然に動きをとめていた。
「どないしたん……や、」
「あ、」
奴らの視線の先にいた女が振り返る。
「優勝おめでとう、蔵ノ介」
いつもは電話越しに耳にしてた声。
せやけど、俺が知っとる桜架とは似ても似つかん姿に、言葉を失う。
春先に渡したジャスミンの花を象ったピアスが、彼女の耳で輝いていなければ、俄かには信じられんかったやろう。
トレードマークやった黒髪のポニーテールは解かれ、肩口で揺れる緩やかな巻き髪に変わっとるし。
そしてデートやろうが何やろうがすっぴんやったんに、今日は薄いながらも化粧してて。
服やって大阪にいた頃にはあまりみかけんかったスカート姿。
そして何よりも変わったんは、桜架を取り巻く雰囲気。
出逢ったばかりの頃は言わずもがな、俺と付き合い出してからも、彼女はどことなく怜悧な空気を醸し出していた。
それなのに今日の桜架は、見た目と同様に柔らかな空気を纏っている。
そのせいか、初期の彼女に痛い目をみとるハズの謙也でさえ、だらしなく鼻の下を伸ばして、食い入るように桜架を見つめている。
……ったく、桜架は俺のモンやっちゅうんに。
「何や見に来てくれたん?」
彼女に集まる視線を遮るように割り込んで、そっと肩を抱き寄せる。
「うん。集中講義が早く終わったから」
間に合ってよかったと微笑む桜架。
この春までは、俺だけが知ってたハズの自然な笑顔。
東京では他のヤツらも見てんのかと思うと、少し面白くない。
「ほんなら今から暇?」
「うん。今日はバイトもお休み貰ってあるし」
「やったらキャンパス案内してくれへん?」
「今から?」
「おん」
「打ち上げとかいいの?」
「構へん。監督にはちゃんと断っといた」
急かすように背中を押すと、彼女は躊躇いながらも頷いた。
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