Conclusion
『蔵ノ介に遠距離を認めてもらう』
それが、丹羽君に相談に乗ってもらった後、私が出した答え。
「勝手やな。ここに残らんクセに俺まで欲しいって。何様やねん、ホンマ」
予想通り、蔵ノ介には不服だったようで、強い非難を浴びせられる。
だけど。
「自分でもわかってる。物凄く自分勝手な言い分だって。でも、ずっと前から決めてたことだから、進学先は譲れないし、譲りたくない。けど、それ以上に蔵ノ介のことも諦めたくないの」
どちらも私にとっては順序がつけられないほど大切だから。
何とか理解して貰おうと言葉を重ねると。
「はぁ〜……」
蔵ノ介は盛大な溜息をついた。
「……全く、敵わんな、桜架には」
そして背中に回される逞しい腕。
「俺の敗けや。今回は桜架の好きにしたらええ」
「い、いいの……?ホントに……?」
予想外の答えに耳を疑う。
「ここまで来て嘘つくわけないやろ。それともホンマは反対して欲しいん?」
意地悪く笑う蔵ノ介に、思いっきり首を横に振る。
「ありがとう、蔵ノ介……」
安堵の笑みを浮かべると、蔵ノ介も漸く意地悪じゃない微笑みを見せてくれる。
「ただし、今から俺が言うこと、守るんやで?」
けれど、ほっとしたのも束の間、蔵ノ介がいきなり交換条件めいたものを提示する。
「う、うん」
守りやすいものだといいんだけれど。
この期に及んで、無理難題をふっかけられないかと、一抹の不安がよぎる。
「まず、毎日連絡すること」
「うん」
「それから隠し事は絶対なしやで?」
「うん」
「あとは……せやな、向こうで住むとこ決まったら合鍵を渡すこと。俺がいつでも桜架んとこ行けるように」
「うん」
どうやら私の不安は杞憂だったらしい。
心の中で蔵ノ介にごめんと謝っておく。
「最後に、あとひとつ」
内心で苦笑する私に、蔵ノ介が最後の条件を出す。
「俺が追い付くまで必ず待ってること」
「え……?」
蔵ノ介の言葉に目を瞠る。
「決めたんや。俺も再来年、桜架とおんなじトコ通うって。せやから、浮気せんと」
蔵ノ介の骨ばった指が顔に伸びてきて、ごく自然な動作で顎を上向かせられる。
「ちゃんと待っとるんやで?」
「……そんなの、当たり前でしょ」
くすりと笑うと同時に、蔵ノ介の顔が静かに近づく。
反射的に目を閉じれば、久し振りのキスが落とされた。
ゲーム
終局(どんなに遠く離れたとしても)
(もう揺るがない)――fin.
-37-
[
≪|
≫]
back