White flag


「さて、」

邪魔者がいなくなったところで、改めて口を開く。

「これは何のマネや、桜架?俺ら別れたやろ?」
「……私は、別れたつもりはないよ」
「ほんなら、大阪残る気になったん?」

躊躇なく喧嘩の要因となった事柄を訊ねれば、彼女は首を横に振って否定する。

「せやったら、ここまでやな。離れや」

さっきよりも一層激しく首を振って俺の指示を拒む桜架は、逆にもっときつく抱き着いてくる。

「なして?大阪残らんかったら別れる言うたやろ?」

最も言い出したんは俺で、桜架がそれに納得しとるわけではなかったけど。
それでも、彼女自身も否定しなかった。

「それはつまり、桜架の決断いかんでは別れるっちゅうことでええんやろ?」
「違うっ!」

首筋に埋められとった彼女の顔が上がる。
黒目がちな瞳が涙で潤んどる。

「違うの、あの時は上手く言えなかったけど、私は嫌。こんな終わり方は嫌なの……」

ぽたり、と彼女の頬を一筋の光が伝う。
桜架の泣き顔を見るんは、これで2度目。

「つまり、桜架は進学先を変える気もなければ、俺と別れる気もないっちゅうんやな?」

せやけど、ここで彼女を責めるんを止めはせん。

俺の問に桜架は、遠慮がちに首肯する。

「それは俺に遠距離受け入れろっちゅうことか?」

泣き腫らした瞳を真っ向から見つめる。
桜架はわずかの間逡巡したうえで、これにも首肯を返した。

「勝手やな。ここに残らんクセに俺まで欲しいって。何様やねん、ホンマ」

1度決めたことは絶対曲げへん。
他の女のように、俺に全てを委ねはせん。

頑固な変わり者。

「俺の願いはきいてくれへんのに、自分は好きなようにするって我儘もええとこやで?」

せやけど。

「自分でもわかってる。物凄く自分勝手な言い分だって。でも、ずっと前から決めてたことだから、進学先は譲れないし、譲りたくない。けど、それ以上に蔵ノ介のことも諦めたくないの」


せやけど、これでこそ俺が惚れた御釼桜架や。



掲げる白旗



(俺の敗けや)



-36-


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