Separation


終礼のチャイムが鳴った。

「……よしっ、」

荷物を纏めて向かうのは、弓道場ではない。

「保健の当番?」
「うん」

椅子に凭れ、仰け反るようにしてこちらを見上げる丹羽君。

「それって白石も一緒?」
「そうだよ。あ、何か伝言でもある?」
「いや、そういう訳ではないんやけど。ちゅうか御釼、自分の腹は決まったん?」
「うん。おかげさまで」

彼の問に頷くと、「そか」と笑顔を返される。

「ほな、頑張りや。んで、なんかあったらまたオニーサンが相談乗ったるから」
「ありがとう」

ぐっと親指を立てる丹羽君にお礼を言って、教室を後にした。



***


そうしてたどり着いた保健室には、どうやら蔵ノ介のほうが先に来ているらしく、中の明かりが扉の隙間から漏れていた。

「……ふぅ」

久し振りに会うせいか、どうしても緊張してしまう。
深呼吸をしてドアを引くと。

「え……?」

信じられない光景が目に入った。

「もーぅ、白石君ってばぁ」
「んー?」
「ウチのしてほしいこと、わかってるクセにぃ」

蔵ノ介と、知らない女の子。
怪我人を手当てするためのソファに、仲睦まじく座っている。

とさっ。

手にしていた鞄が落ちる。

音に反応して2人の目がこちらに向けられた。

「な、……に、してる、の……?」

冷めた視線を投げる蔵ノ介に問う。
動揺のあまり、声が震える。

「別に。先輩には関係ないやろ」
「関係ない……って、そんな、」
「ないやろ。別れたんやから」

淡々とした低い声。
静かな怒りが伝わる。

「私は、そんなつもり、」
「ないって?ウチの部長とよろしくやっとるクセに?」

切れ長の瞳が鋭い光を放つ。

「どうして、そこで丹羽君が」
「白石君」

私の抗議を遮るように、蔵ノ介の膝に座ってる女の子が甘えた声を出す。

「あんなの放っておいて、続きしよ?」
「……せやな」

ちらり、とほんの一瞬だけ私の方に視線を向けて、意地悪く口元を歪める蔵ノ介。
甘えてる女の子の顎を持ち上げて、2人の距離が徐々に縮まる。

まるで、私に見せつけるみたいにゆっくりと。

「ダメ――っ!!」

その先を見たくなくて、反射的に叫んだ。



引き裂かれたココロ



(お願い、いかないで)



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