Interlude byN


「ありがとう」

屈託のない笑みを俺に向ける御釼。

……ったく、さっきあれだけ忠告したったのに。

『やっ……!』

耳に残る小さな悲鳴と、突き飛ばされた胸の痛み。
あの時、ホンマは本気で彼女を俺のモンにするつもりやった。
俺を拒絶した御釼があまりにも怯えた表情をしていたから、咄嗟に冗談にして誤魔化したけれど。

「……脈アリやと思ったんやけどな」

俺は多分あるひとりを除けば、誰よりも御釼と親しい間柄といえるやろう。
せやから、そのあるひとり――、白石と彼女が別れたっちゅう噂を聞いたときはチャンスやと思った。

せやけど。



「所詮、俺はオトモダチ止まりっちゅうことか」

あの時、彼女の中の境界線が目に見えた気がした。
きっと御釼にとって、そのラインを越えてええのは白石だけなんやろう。

「なぁ白石。早よ元の鞘に納めろよ?」

でないと今のうちに俺も孤高の女王様を手懐けて、お前のポジション奪ってまうで?

それが妙に悔しくて、クラスメイトの人垣の向こう、遠ざかっていくミルクティブラウンの髪の持ち主に、そっと宣戦布告しておいた。



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