Difference


「……はぁ」

ケータイのメールを確認して溜息をつく。
蔵ノ介と喧嘩して1週間。
彼からは全く音沙汰がない。
新学期が始まれば、学校で会えるかもと思ったけれど、3年と2年ではクラスのある棟が異なるため、偶然に出会うことはなかなかに難しいらしい。

かといって、あのままうやむやにできる問題でもないため、しっかり話し合おうと、私の方から蔵ノ介にメールを入れたのが、一昨日のこと。
いつもならすぐに返信があるのに、今回は全くの無反応。

最初は体調でも崩したのかと心配したけれど、そういった話を一切耳にしないので、(蔵ノ介が欠席すれば、すぐに噂で広まるし)元気に登校しているんだろう。

「寂しい……な」

蔵ノ介は、私が嫌だと言っても朝から下宿先に押しかけて来て、一緒に登校していた。
けれど新学期始まってからはそれもない。
喧嘩しているのだから、当然と言えば当然なのだけれど。
いつの間にか、傍にいるのが当たり前になっていたから。
言いようのない寂しさと不安ばかりが募る。

このままずっと蔵ノ介に会えないまま、終わってしまうんじゃないかと。



「あ、白石君だ」
「どこどこ?」

鬱々とした思考を繰り返していると、クラスメイトの会話が耳に入ってきた。

「ほら、あそこ」
「あ、隣歩いてんの、テニス部マネじゃん!」
「うわ、腕まで組んでる」

彼女たちが見ている窓の外に視線を向ければ、ミルクティブラウンの頭と、隣を歩く女子の姿。

「ね、やっぱりあの噂、ホンマやったんちゃう?」
「あ、御釼さんと別れたっちゅうやつ?」

「え……」

何とはなしに聞き続けていた会話から、予想外の言葉が出てきて思わず驚きを口に出してしまった。

振り返った彼女たちと目が合うと、2人はばつが悪そうに目を逸らしてそそくさと離れて行ってしまう。

『別れよ』
『だったら終いで決まりやな』

この間の別れ際、蔵ノ介が吐き捨てた言葉が、脳裏に蘇る。
あれは、蔵ノ介が私に言うことを聞かせるための方便だとばかり思っていたけれど。

「まさか……、本気だった……?」

とんでもない勘違いをしていた可能性に、今更ながら愕然とした。



すれ違うふたり



(こんな終わりは、嫌だよ)



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