Checkmate


熱の残滓を帯びた赤銅色が、真っ白な部屋から溢れている。
保健室を出ると、俺は扉の陰で自分の気配を消した。
すると、すぐに中から押し殺した嗚咽が漏れ聞こえてきた。

……捕らえた。

口元が歪んだ弧を描く。

『雪の女王』が見せた様々な変化の中で唯一変わらへんもの。
それは決して他人に泣き顔を見せへんことや。
どれだけ女子たちにえげつない言葉浴びせられても、傷つけられても。
持ち物奪われたり、壊されたりしても。
彼女は決して人前では泣かんかった。
いっつも独りになるまで涙を堪える。

それでええんや。

『雪の女王』――いや、桜架の泣き顔は俺だけのもんやから。

桜架の弱さを知ってええんは俺だけ。
桜架が頼ってええんは俺だけなんや。

「くくっ」

喉の奥で笑う。
ここまで来ればあとは彼女の一手を待つだけ。

そう。
泣き腫らした目で桜架が「答え」をくれるんを待つだけや。

勿論俺が望んだ通りの「答え」を、な。



王手をかける



(さぁ逃げ場はないで、女王様)



-25-


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