印象は最悪
呆れ顔のチカと、やめておけという忠告をくれたサワに対して、有言実行を宣言した直後。
財前君と話せる絶好のチャンスが到来した。
「ありがとうございましたー」
私が欠席した日に決められたらしいクラスの係。
自分が図書委員になっていたことと、今日が当番の日であることを終礼で担任に教えて貰って、図書室へ行ったら、先に来ていた相方が何と財前君だったのだ。
私は十分に驚いたのだけれど、当の財前君は大した興味もないらしく、「よろしく」と一言言われた後は、特に会話もないまま当番業務に従事している。
……まぁ、真面目に仕事してるのは私だけで、財前君はというとカウンターテーブルの下で、ちゃっかりスマホをトントンしてるのだけど。
「あの、財前君?」
「んー?」
「返却された本って……、」
何か話しかけんなみたいなオーラが出てる気がしなくもないけど、敢えて気づかないフリをして声をかける。
でないと最初の集まりを欠席した私には委員の仕事もわからんしね。
「カゴ」
……会話する気ゼロ。
「……入れとけ。後でやる」
要領を得なくて、暫し硬直していると、財前君はちらっとだけこっちを見て、面倒臭そうに言葉を付け足した。
勿論、この間もスマホを触っているのは言わずもがな。
「あのさ、財前君っていつもスマホで何してるの?」
最初は世間話をしてから核心に触れようかと思ったけれど、相手にその気がないので、さっさと本題に入ってみた――
「……い、」
「はい?」
「アンタには関係ない」
のだけども。
ものの見事に一蹴された。
……確かにそうだけど。
「関係なくはないでしょ。私は委員の仕事してる。財前君はサボってる。迷惑してるんだけど」
言い様に腹が立ったので、カウンターに掌を叩きつけて抗議すると、彼が緩慢な動作で立ち上がった。
「な、何っ!?」
至近距離でこちらを見下ろす瞳。
真っ直ぐ射抜く視線に思わずたじろぐ。
「…………カノジョ」
「へっ!?」
「コレの相手」
間近にケータイをちらつかせ、こちらが怯んだのを見ると、口の端を吊り上げて、すたすたとカウンターを離れる。
「ちょ、財前っ!」
「あとやっとくから、お前帰れ」
これで文句は言わせないとでも言うように、返却された本をひらひらと振って、追い返すような仕種をされた。
な、なんなんだっ、もうっ!
-4-
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