早朝のホーム。
いつもと同じ時間おんなじ場所で、通勤ラッシュが始まる直前の列車が来るのを待つ。
周りに居る人も同じ顔ぶれ。
ほんまに昨日までと何の変哲もない朝やけど、俺は列車が来るんが待ち遠しくてしゃーなかった。

ラケットバックから出した紙袋。
俺がハマっとる推理モンのシリーズが入っとる。

『ありがとう!』

脳裏に浮かぶのは昨日、これを貸す約束をした彼女――ひなさんの笑顔。
いつもおんなじ列車に乗ってて、ずっと気になっとった人。



***



彼女との出会いは、この列車。
高校にあがり、中学と同じテニス部に入ったばっかりの頃。
1年生は早朝にコート整備をしろと言われて、眠い目を擦りながら、あの頃使うとった通勤ラッシュ真っ盛りの列車より1時間近く早いこの列車に初めて乗った。

あくびを噛み殺して開いたドアをくぐると、背筋を伸ばして本を繰る彼女の姿が目の前にあった。
多くの客がいびきをかいて寝とる中で、優雅に読書を進める彼女はとても綺麗で、一瞬で目を奪われた。

そしてその日から俺は彼女に逢いたくて、部活がない日でさえもこの列車を使うようになったんや。



***



列車の到着を知らせるベルが鳴る。
紙袋をしっかりと持ち直して、俺は列車が入ってくるのを今か今かと待ちわびた。


キミとボクを繋ぐ

Love Train



(もしひなさんにこのキモチ伝えたら、どう思われるやろか……)

この時の俺は、もう少し未来で、彼女がそれを最高の笑顔で受け取ってくれることを、まだ知らない。





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