高校の入学式。
見知った顔も見知らぬ顔も、どちらも一心不乱に見つめるのは、大勢の名前がずらっと並ぶ新入生のクラス一覧掲示。
かく言う俺もそのうちのひとりで、目を凝らして自分の名前を探す。
「「あ」」
あった、の声が誰かと重なる。
驚いて隣に視線をやれば、俺と同じクラスを指差してる女の子。
振り返った彼女をみて俺は、一瞬だけ掲示板に目を戻す。
もしかして、と思ったら案の定。
同じクラスの中にあった、幼馴染の名前。
小学校低学年の頃、彼女が転校したきり会ってはなかったけど。
まじまじとこちらを見つめる彼女には昔の面影がばっちり残ってて。
……俺はすぐわかったんやけどな。
首を捻る彼女に、思わず苦笑。
「五十鈴川ひなさんやろ?」
彼女の名前を言い当てれば、黒目がちの瞳が驚いたように見開かれる。
「覚えてへん? 小学校んとき一緒のクラスやった白石蔵ノ介」
「クーちゃんっ!?」
懐かしいあだ名で呼んでくれる彼女に、一応覚えてて貰えたんやと一安心。
「いつこっち戻ってきたん?」
そう訊ねた俺に、彼女はつい最近と答える。
以前ここを離れた時もお父さんの仕事の都合やと言ってた記憶があるけど、今回戻ってきたのもそうらしい。
「いつまでおるん?」
前一緒におれたんは、多分1、2年。
今回もそうなんやろかと思って訊いてみると。
「少なくとも私がこの学校卒業するまでは、転勤ないって」
返された答えに、安堵の吐息を漏らす。
それならば。
「この3年間絶対楽しくなるな」
半径85センチ
そこにキミがいるウチに
(絶対叶えるこの想い)
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