薄紅色の花びらが舞う青空の下。
まだ自分の学校という実感が薄い、真っ白な校舎の下には、私と同じように真新しい制服に身を包んだ新入生の人だかり。
みんな一斉に400人近い生徒の名前がずらっと並んだ掲示板を眺めて、自分のクラスを確認してる。
中には同中の子とまた一緒だね、何て会話をしてる声も時々聞こえてきたりもする。

いーなぁ。

高校からこの地区に引越してきた私にとっては、周りは全員初対面。
そんな話ができるコ達がちょっと羨ましい。

まぁ昔、小学校の低学年まではこっちにいたけど、その頃の友達とはもう繋がりないし、多分ここで会ったとしてもお互い変わりすぎててわかんないだろうし。

友達できるかな、と一抹の不安を覚えながら、目を皿のようにして自分の名前を探すと。

「「あ」」

あった、の声が隣の人と重なった。
驚いてそちらを見れば、すらっとした長身のかなりなイケメン君が。

そして彼もまた同じように驚いたんだろう、振り返った視線がばっちり重なった。

「……自分もこのクラス?」
「あ、はい」

と、私と同じクラスを指差す彼。
そのミルクティブラウンの髪に何と無く既視感を覚えて、ついまじまじと見つめてしまう。

どっかであったことあるような……?

思い出せずに首を捻っていると、当のイケメン君がくすりと笑う。

「自分、五十鈴川ひなさんやろ?」

そしてズバリ言い当てられた私のフルネーム。

「覚えてへん? 俺、小学校んとき一緒のクラスやった白石蔵ノ介」

驚いて目を見開いた私に目の前の彼が告げたのは、小学校まで一緒だった幼馴染の名前。

「蔵ノ介って……、クーちゃんっ!?」
「せやで」

懐かしいな、その呼ばれ方。

そう言って笑みを深めると、なんとなく昔の面影が滲む。

けれども。
変わりすぎでしょうよ。
小学校の時はカッコイイっていうよりは可愛い感じで、背だって私と大差なかったし。

「確かに女の子みたいやってからかわれてたけど、一応男やから」

成長したで、と苦笑するイケメン改めクーちゃん。

「ちゅうか、いつこっち戻ってきたん?」
「つい最近だよ。父さんがまたこっちに転勤になったから」
「いつまでおるん?」
「少なくとも私がこの学校卒業するまでは、転勤はないって」

あっけらかんと話せば、クーちゃんは飛び切りの笑顔を私に向けて。

「ならこの3年間、絶対楽しくなるな」

行こか、と差し出された手をとると。



何かがはじまる音がした



(その言葉と笑顔のホントの意味に、私が気づかされるのはもう暫くあとの話)





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