「ふぅ……」

社会人になって早5年。そろそろ中堅ということで任される仕事量も増えてきた。
その分収入はあがり、そのおかげで学生の頃から付き合うとるひなと同棲できるようになったけれど、こうも帰宅が遅くなると、あまり一緒に暮らしとる意味がない。

「ただいま」
「おかえりなさい」

小さなアパートの扉を開けると、にこやかに出迎えてくれるひな。
その笑顔のおかげで、1日の疲れも綺麗に吹き飛ばすことができる。

うん、俺の心のオアシスや。

そんな彼女の額に、挨拶代わりのキスをする。

「ん?」

ふと、鼻腔を擽るええ匂い。

「気がついた?」

肩より少し下で、ひながしたり顔で笑う。

「今日は蔵ノ介の好きなチーズリゾットだよ」

早く早くと、急かす彼女に従ってダイニングに向かう。

「今日はえらい豪華やなぁ」

テーブルの上に並べられた品数もそうやけど、ぱっと見た感じ、どれもかなり手が込んでいる。
ひなだって仕事があって大変なはずなのに。

「今日って何かあったっけ?」
「やっぱり忘れてたんだね」

俺の疑問に、苦笑を返すひな。
一旦キッチンに戻った彼女が、次に手にしていたのは、小さなホールのショートケーキ。

真ん中に円を書くようにローソクがたてられているそれは、まるで誕生日ケーキのよう。

「まるで、じゃなくて、まさしく誕生日ケーキだよ」
「え?」
「ハッピーバースデー、蔵ノ介」

彼女の手にあるケーキにも、チョコペンで“Happy Birthday KURA”の文字。

「ホントはもっと盛大にやりたかったんだけど、間に合わなくて」

と、眉尻を下げる彼女を、そっと抱き寄せる。

「おおきに、ひな……。俺はホンマ果報者や……」

自分さえも忘れてた誕生日。それを1番大事な人に祝って貰える。
これ以上に幸せなことはないと思う。

「いっつもひなにはさみしい思いさせとんのに……、ホンマにありがとう」
「ううん、蔵ノ介が頑張ってくれてるから、こうやって一緒にいられるんだよ。こちらこそありがとう」

上向いてこっちに真っ直ぐ向けられた笑みに、愛しさが募る。

「これからもよろしくね」
「こちらこそ」

腕の中で笑う最愛の彼女に口付けた。



青い鳥
幸せはすぐそこに





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