「ん……」

微睡む意識の中で、頬に感じる冷たい空気。
温もりを求めて肩まで掛かってた布団を引き上げ寝返りを打つと、鼻先が何かにぶつかり、驚きで目が覚めた。

「!?」

視界いっぱいに広がる金髪。
少しズームアウトすれば、瞼を閉じてる謙也の顔。

昨晩はクリスマスイブ。
付き合って半年になる謙也と、初めて夜を一緒に過ごしたんだった。
お互い一糸纏わぬ姿で布団にくるまれていると、昨日の出来事が思い起こされて気恥ずかしくなるけれど、それと同時に幸せな気分にもなって、自然と顔が綻ぶ。

気持ち良さそうだなぁ。

微かな寝息を立ててる謙也の顔をまじまじと見つめる。

無防備になってるからだろうか、起きてる時の彼よりも、少し幼く見えて何だか可愛い。

「ふふ、」

母性を擽られるとでも言うのか、無性に彼の頭を撫でたくなって、綺麗に脱色された髪に手を伸ばす。

「ん……、あと、5分……」

ワックスの落ちた髪はふわふわで、触り心地がよくて、さらさらと梳くように撫でていたら、謙也は眉間に皺を寄せて、こんな寝言を呟いた。

「朝ですよぅ。起きて、起きて」
「あ、れ……、ひな……?」

瞼が震えて、ぼんやりとした瞳があらわれる。

「おはよ、謙也」
「おはよーさ……、んっ!?」

ぱちぱちと目を瞬かせたかと思うと、切れ長の瞳がまん丸に見開かれた。

「ひな……!?」

驚いた謙也が、いきなりばっと起き上がるから、布団も持ち上げられてしまって冷たい空気が全身に触れる。

「謙也、寒いよ」
「す、すまん……」

顔を紅く染めた彼はゆっくりと身体を沈めて、きゅっと私を抱きしめた。

「あったかい?」
「う、うん……」

直に触れる温もりに身体の中が沸騰しそうなくらい熱い。

「てか、ひないつから起きてたん?」
「えと……、謙也が起きる少し前?」
「あちゃー、やられた……。先に起きて寝顔拝もうと思てたんに」

悔しそうな顔をする謙也。

早く起きてよかった。
寝顔なんて恥ずかしいもの、見る側ならいいけれど、見られるのはちょっと嫌だ。

「人の寝顔見といてよう言うわ。ま、次は浪速のスピードスターの名にかけて、絶対ひなより早よ起きて拝んだるけど」
「次もあるんだ?」

リベンジ宣言する謙也が格好よすぎて悔しかったから、少し意地悪に返すと、謙也はむっと口を尖らせた。

「当たり前やろ。ひなを手放す気なんかさらさらないわ」

ひなは嫌なん?

と、不安げな瞳がこちらを向く。
昔あった某CMの犬みたいな瞳は反則だ。
ちょっとした意趣返しのつもりだったのに、罪悪感がハンパない。

「嫌だなんて、そんなことあるわけないじゃん」

広い胸にぎゅっとしがみつくように顔を寄せると、よかった、と嬉しそうな声が降ってきて、背中に腕が回される。

「あ、」

温もりに包まれて幸せを噛み締めてると、私の目線の少し上にある謙也こ喉仏が震えた。

「どうしたの?」
「雪や」

謙也の目線の先にあるカーテン。
それに映るのは、はらはらと舞い散る細かな影。

2人して布団を被ったまま身体を起こしカーテンを開くと、外は鮮やかな銀世界。

「綺麗……。ホワイトクリスマスだね」
「せやな」

そっと肩を抱き寄せられる

「今年のクリスマスは特別だね」

こうして謙也と一緒に朝を迎えて、初雪まで一緒に見えて。

「素敵なクリスマスをありがとう」
「こちらこそ。俺と一緒にいてくれておーきに」

幸せをくれた彼を見上げてお礼を言うと、謙也は照れ臭そうにはにかんだ。



初雪

キミと




(雪降るくらい寒いんやったら、今日はずっとこうしてよか)






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