夕焼けに紅く染まる教室。
校庭のほうへ目を向ければ、運動部の人達が帰路につく姿。
その中でひとりだけ、校門とは逆方向にある校舎に向かう黒髪少年がいた。

来た。

それだけで鼓動が早くなる。

髪、ぐしゃぐしゃじゃないかな。

窓に映る姿を確認してる自分に思わず苦笑。

……あいつとは、中学からずっと一緒だったじゃない。

今更見かけを少し取り繕ったって、私の素がとうにバレてるあいつ相手じゃ意味もない。
わかりきってることなのに、あいつの目に私がどう映っているのかが、気になって仕方ない。

ホントにいつからだろう。

あいつの一挙手一投足にドキドキしたり、あいつの言動に一喜一憂したりするようになったのは。

初めて会ったのは、中学1年の時。
名簿順で並んでた席が隣同士で。
積極的に話し掛ける私に対して、相槌さえも稀にしか打たないあいつ。
無口で無愛想な奴だとばかり思ってたあの頃が、随分と懐かしい。

今じゃお互い好き勝手言い合うような間柄で、クラスメイトからはそのやり取りが夫婦漫才のようだと、からかわれる日々を過ごしてる。

そんな中、ふとした瞬間にあいつが見せる笑顔。
無表情か、笑うにしても鼻で笑ったり、小馬鹿にするかのどっちかばっかな気がするあいつのホントの笑み。

好きという気持ちに気づいた瞬間だった。

その笑顔を独り占めしたいと思う反面、友達というこの距離を壊したくなくて。

ずっと悩んでいたけれど、あいつの隣を他のコには譲れないから。



「五十鈴川」

教室のドアがガラリと開いて、いつもと同じ少し気怠そうな顔をしたあいつが、低音ボイスで私を呼んだ。

「何やねん、話って」
「あ、あのっ、ね……っ!」

切れ長の瞳とばっちりかち合う視線。
それだけで鼓動が加速して、声が上擦ってしまう。

ダメダメ、こんなんじゃ。
言いたい事も言えなくなっちゃう。

自分自身に言い聞かせながら深呼吸。

「あの、ね、財前……。驚かないできいて欲しいの」
「何や? 早よ言え」

「私、ね……」

こちらを見据える財前の目を真っ直ぐ見つめて。


「ずっと前から、財前のことが好きでした」


Surely




(“俺も”と照れ臭そうに笑うキミがもっと好きになる)








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