「みょうじさん、今日もかわいかったなあ」
『うるさい』
「ワォ、怒った顔もかわ『だまれって言ってんでしょ!』





隣の席の白石はいつもこんな感じのノリで正直なところ凄く苦手。
無意味に見つめてきたり、こうして訳の分からないことを言ってきたり。


天下の聖書とやらがどうしたことか。
聖書は人をも笑わせる能力を必要としているんだろうか、それなら私は一切笑えない。


ともかくHRも無事に終わったことだし、早く帰らせてほしい。



『あのさ白石』
「ん?」
『困るからさ、やめてよ』
「なにが?」
『周りから見たら仲良いように見えちゃうんだって、余計な誤解されちゃったら大変だよ!』

キョトンとしている白石を目の当たりにしてため息がでた。
人がこんなに真剣になってるのに。


「ほなな、誤解やないようにしたらええねん」
『は、何言ってんの』
「やからさ、ほんまに付き合うてしもたらええねん」

呆れて声も出ない。
むしろイライラしてきた、ここまで話が通じない聖書なんて存在していていいものなのか。

「みょうじさん怒ってる…」
『当たり前じゃない』
「笑ってほしいから…
ジャジャジャジャーン!」


何やらポケットをゴソゴソしだしたかと思うと急に叫ばれたから驚いて肩を揺らしてしまった。

そんな私の目の前には小さなかわいい袋が。



「誕生日おめでとう!みょうじさん!」


『…は?』
「は?やあらへんやん、今日誕生日やろみょうじさん」
『え、あ、まあそうだけど』
「俺からもプレゼント」


これにはさすがの私も恐縮してしまう。
クラスメイトでたかだか隣の席というだけで誕生日にプレゼントをあげなきゃいけないなんておかしな話だ。



『あ、あの…』
「みょうじさん、ただのクラスメイトにプレゼントあげるなんておかしい思てるやろ」
『うん、そうだけど…』

そう答えると白石は肩を落とした。
自分で言って自分で落ち込むって一体なんなのよ。
ほんと何者なの、白石って。

「それって俺の気持ちが届いてへんってことやんな…」
『俺の気持ちってなによ』



「俺、みょうじさんのことほんまにかわいいって思てる。
好きです、みょうじさん」



今度は私がキョトンとしてしまう。
少しだけ胸がキュンとしたのはきっと気のせい。


「やから、はい」
『…いいの?』
「もちろん」



鼓動が速くなってきて顔も赤くなってきてるのがわかる。
白石から袋を受け取り、袋を開ける。
その指先さえも震えて私らしくないな、なんて思った。





『な、なにこれ』
「あーほんまに受け取ってくれてうれしいわみょうじさん。俺とお揃いやねんで!」
『これって…』
「そう、ペアリング!俺らが愛し合ってる証や!」


『い…いるかー!』



俺は毒手やから右手にはめなあかんな。なんてウザイことを言ってる白石に指輪を投げつけてやった。

白石に好きだって言われてうれしいと感じてしまった自分が情けない。
やっぱ白石は気持ち悪かった。


「あー!俺たちの大事な愛の結晶が!」
『白石みたいな馬鹿に付き合ってらんない、帰るから』

みょうじさーん!と涙目になりながら追い掛けてくる白石。
でもこんな関係も悪くないかな、そう思った私のうららかな誕生日。



果たして、ペアリングをふたりではめる日は来るのだろうか。
その日は意外と近いということを私はまだ知るよしもなかった。










恋しちゃった



(白石に恋しちゃったんだ、たぶんね)



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沙織様より誕生日プレゼントで戴きました!
白石……かわいすぎです!
涙目になってる彼にきゅんきゅんしながら、抱きしめたいな!とか叫んでました。
素敵なプレゼントありがとうございました!





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