それは、俺の夢

 おもいだせん。
 がしがしと掻き毟った頭から詰め込んだはずの知識が雲脂のように剥がれ落ちていくような気がした。ぼろぼろ。
 へたった単語帳はなんかかなり勉強してるような感じ。先輩のおさがりなだけだけど。ブックイヤーとかカラフルな付箋がいっぱいついてるのもなんかかなり勉強してるような感じ。ただ覚えてないのが多過ぎるだけだけど。目標なく勉強するのは効率が悪い。勉めど、勉めど、 我があたまよくならざり ぢっと手を見る。うわっ、生命線短かっ。テンションさがるわ。
 なんとなく、立ちあがって先頭車両に向かおうとおもいます。いっても二両編成だけど。ふらふらと歩けば、いろいろなところからの視線がいたい。急なカーブによたよた。それをみてだれかがけたけた。んで、俺の顔がてかてか。
 やっとのことでたどりついた、先頭車両の一番前。運転席の窓にへばりつくように立つ。きらきらと夏の光が顔に降ってくる。流れる景色。ああ、絶景かな。


 突然さした影。視界の端になにやら異物。にぶい音。

「俺、心理カウンセラーになるわ」

 甲高いブレーキ音のなか、重力に圧迫された脳はやけにはっきりとことばを紡ぎだした。

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