「洋菓子はあんまり好きじゃない?」

未だ手付かずのケーキにそう尋ねれば、時雨がすみませんと目を伏せた。
いわく、生クリームはそんなに得意ではないらしい。

頂き物のケーキを一人で食べるのは味気ないけど、無理して食べさせたいわけでもない。
皿を下げると、あ、と半ば無意識らしく伸ばした手と何かを形作りかけた口。察するに、言いたかったことは「もったいない」辺りだろう。

「明日俺がおやつに食うから平気」

時雨の食べかけ、間接チューと茶化せばわかりやすく目尻が色付いた。
気に揉まないようにと言ったつもりだったけど、意図せずいいものも見れたのだから、このケーキも役立ったというものである。

「氷削るか。宇治金時」
「はい。台は俺、押さえますね」

いつものおやつを提案すれば、ホッとしたようにようやくいつもの顔で頷いて。
洋菓子に戸惑う姿も可愛かったが、やっぱりこっちの方が好きだなと笑った。

(120816)

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