作るのは得意なのに飲むのはからっきしなロックは、いわく「お酒は辛すぎて苦すぎて良さがわからない」らしい。
味見をせずともおいしくできる腕前は誇るべきところだが、それにしたってどうしてうまくも感じない酒をここまで極めようと思ったのかが不思議だ。
「…………マスターが、うまい酒毎日飲めたらなって言ったんじゃないですか」
空になった俺のグラスに追加の準備をしていたロックの手が止まり、中の氷をもてあそんでいた俺の動きも止まる。
忘れたんですか、と唇を尖らせたロックに瞬きを返すこと数回。
じっとりとした目に暗に責められること数秒。
「…ごめん、覚えてない」
記憶をどれだけ手繰りよせても見つからなかった答えに、先程から一転ロックの眼差しがふっと和らいだ。
「まあ、そうだと思ってましたけど」
ただやりたくて始めたことだから最初から怒ってなどいなかったと表情を崩されると、こちらも重ねて謝るしかない。
「本当ごめんな、そんないじらしいことしてくれてたのに」
「そ、そういうこと言うのやめてください」
いじらしくなんか、と目元を染めるロックに、あ、いいなと思う。
ロックがこうして家で酒を用意してくれるようになってから久しく外には飲みに行っていなかったが、昔はよく飲み屋を渡り歩いていた。その悪いくせが飛び出しそうだ。
「いじらしい。可愛いよ、お前にも酒が入ってたら口説いてた」
飛び出した。
アルコールを摂取するとどうにも口が軽くなっていけない。思ったことを何でも言ってしまいお前は接待に向かんと上司に何度も怒られ、最近は何とか自重できていたというのに。
反応の返らないロックに引かれただろうかと心配になって顔を覗き込む。それと同時にロックが動いた。
「ロック?!」
ぐい、と勢いよくグラスを傾けるロックの飲み干した液体は、先程俺に出してくれていたものと同じであるならなかなかに度数の高いものだ。
慌てて水入りのグラスを手渡そうと駆け寄ると、ロックがさっきよりうんと赤らんだ顔でこちらを見上げてくる。
「あの、あの! おれ、おさけ弱いから一杯ですぐ酔うんで、」
言葉はそこで途切れたが、期待するように向けられた眼差しだけでもう充分だった。
はやく口説いて
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