マスターに、見合いの話があるらしい。
それを知ったのは、マスターの母親からの電話で。
いい加減身を固めたらどうなのという伝言は留守番電話に録音されて俺が電話対応したわけではないが、しても一緒だっただろう。

俺には、マスターの結婚を邪魔する権利がない。
女型ボーカロイドのように可愛らしくマスターとずっと一緒にいたいのとねだることも、他のカイトのように素直に寂しいのだと言うことも出来ない。

俺とマスターの間には、身体の関係がある。
割り切った関係に、アンドロイドは最適だ。
だからこそ俺は、割り切れていないといけない。

新しい女を連れ込むのか。
散々俺をなかした夜の顔を、俺以外の誰かに向けて。
そうして、俺は、俺はどうする?

――捨てられるのも時間の問題だ。
ベッドの上、投げ出した身体が妙に冷える。

優しく抱きしめて寝るなんてやめてほしい。
俺をうんと甘やかして、一体どうしろと言うんだ。
…いや、本当はわかっている。確かにマスターは俺にどうしろとも言っていない。
だけど、俺たちは割り切った仲だ。おまけに、察することは得意だった。

今日が最後の温もりだ。
わかっていたから、キスをねだった。

(120906)

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