「マスター!」
パチ、とキーボードを一叩きして、パタパタと駆けてきたチロルを見上げる。
あぐらをかいた俺の膝にするりと滑り込むのはもう日常になってしまったから、何も言わないけど。
「どうしたんだ?えらくご機嫌だな」
投げ出した足をブラブラさせて、鼻歌まじりなその様子は何かいいことがあったとしか思えない。
チロルはえへへ、と笑ったあとに、楽しくてたまらないという風に口を開いた。
「今日は、ミクの誕生日なんですよー」
だから私の誕生日でもあるんです。
えへん、と胸を張るチロルに、へえ、と感嘆の声を上げる。
――誕生日。
思わずカレンダーに目をやった。なるほど、今日は8月の31日か。
「みんないっぱい祝ってくれてるんですよー」
「それは嬉しいですねー」
「そうなんですよー、嬉しいんですよー」
でもマスターに祝ってもらえたらもっと嬉しいと思うんですよー、とニコニコして言ったチロルを後ろから思い切り抱きしめた。
「あーチロル可愛い。誕生日おめでとう」
「えへへー、ありがとうございます」
「チロルちゃんは今年で何歳になったんですかー?」
「16歳になりましたー」
「解せないですねー」
(120831)