食物連鎖 | ナノ
notBL/中二くさい/若干グロ的表現?
ぐしょりという音にふと顔をあげると、道端に潰れてぐじゅぐじゅになった腹ワタをぶちまけて横たわっている猫の死体と、車体に赤色をかすかに纏った白いワゴン車が急発進していくのが見えた。
ワゴン車を目で追いながら、猫の側に寄る。
猫を見るとじわじわとその面積を広げていく赤い汁の中に、消化しかかっている小魚を見つけた。どうやらこいつは死ぬ前に食事をしていたらしい。
でもその後すぐに、車に轢かれて死んじまった。
生きるために食べた。それでも結局は、彼の(あるいは彼女の)、予想もしなかった出来事によって、死んでしまった。
生き物はいつ死ぬのか、自分自身も、自分以外の誰も知らない。そいつらだって、自分がいつ死ぬのか知らないんだ。
誰も知らない。
死んだ時初めてわかる。
だとしたら、生き物が生きるために行う行為は、今その一瞬を生きるのか、死ぬのかを選択する為に行う行為であるということなのかも知れない。
俺はそう考えた時、それは凄く、何故だか凄く虚しいことのような気がした。
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「ただいま」
一人暮らしであるから俺以外の人間がこの部屋に存在するはずは無いのに、どうしても昔からの習慣からか(母親に挨拶だけはしっかりしろっていつも言われてた。)返事が返ってくることはないと分かってはいても、どうしても言ってしまうのだ。
肩にかけていたバッグを、リビングの真ん中にあるローテーブルへと置くと、ソファに体を預けるようにして深く座る。そして一つの大きな深呼吸をする。
そうして、俺はやっと落ち着くことが出来るのだ。
暫くぼんやりと白い天井を眺めてから、漸く俺は上半身を起こしてテーブルに置いたバッグへと手を伸ばした。
ファスナーをゆっくりと開いていきながら、俺はこの後行う行為について考え興奮した。
ファスナーを端までぴっちりと開けてから、俺はその大きな口から厳かに真っ赤なビニール袋を取り出した。
その袋を上へ掲げるようにして持つ。
窓から差し込む淡い沈みかけた太陽の光で透かしながら、くるくる回してその袋を眺めた。
右回転左回転。
そうしてまた右回転したときに、虚ろな目をした小魚と目があった。俺はにやりと笑う。
お前も魚料理としてメインディッシュ扱いしてやるよ。
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窓の外はすっかり暗くなっていた。
俺はリビングのソファにまた深く座りながら、相変わらず白い天井をぼんやりと眺めていた。
もう何回も繰り返してきた行為だった。
自分で殺したりしたことはなくて、いつ新鮮なものを拾ってきていた。
昔から俺は、そういう小さな命が一瞬で尽きる場面によく出くわした。
なんというのか。“そういう”体質なのかもしれない。
俺はふと今日あいつと出会った時に考えたことを思い出した。
「『今その一瞬を生きるか、死ぬのかを選択しているに過ぎない』…」
自分以外誰もいない部屋に、その言葉はよく響いた。
「じゃあ俺のやっているこの行為も、生きることを選択した結果だって言うのか」
その声に返事をしてくれる者はいなかった。
彼はただ瞳から溢れて来るものをひたすらに拭った。
ああ、でも。またこの次も、俺はこの行為を行ってしまうんだろう。
きっと俺は永遠に生きることを選択し続ける。
俺は彼等の様にはなりたくない。
食物連鎖
(ごちそうさまでした)
篠塚はお腹が空いてました
でもあれだよ?
猫ちゃん食べちゃうような
そんな野蛮人じゃあないよ
篠塚さんは
(20120701)