タイトルでわかってね/激短
「早く死んでよ」
笑いながらけんちゃんが言った。
「けんちゃんもしかして俺のこと嫌い?」
「ううん、大好き」
そう言うとけんちゃんは俺の額にちゅっ、と小さくリップ音を響かせながら口づけてくれた。嬉しい。
けんちゃんは、仰向けに寝転がっている俺のお腹の上辺りに乗ってきた。けんちゃんの体重が腹にずしりとのしかかり、内蔵の圧迫される感覚に俺は小さく呻き声をあげた。
けんちゃんの両手が俺の喉元にかかる。そのまま包み込むようにして、ゆっくりと締め付けられた。段々と気管が狭くなっていく。同時に息も出来無くなってきた。
そうして完全に締め付けられた。けんちゃんは腕ごと使って俺の首を力いっぱい締めて付けてくる。おかげで顔は真っ赤っか。
それでも、けんちゃんは笑っていた。
「君のことが本当に好きだ。世界一、いや宇宙一と言っても過言では無いよ。だけどさ、だからこそなんだよ。だからこそ死んでほしいんだよ、愛してるからさ」
俺も愛してると言いたかった。抱きしめて、俺もけんちゃんのこと好きだと、愛してると言いたかった。
でも俺の喉からはもうひゅうひゅうと空気の抜けるような音しか出なかったし、俺の身体はもうどこも力が入らなくて、ただ意味も無く、勝手にひくひくと痙攣するだけだった。
「好きだよ。君のことを、誰よりも何よりも、俺が一番愛してる」
いよいよ視界が白み始めてきた。隅の方から中心へとじわじわ、じわじわと真っ白になっていって、見えずらくなっていった。
それでも、それでも真っ白な世界の中で、けんちゃんは笑っていた。
俺はけんちゃんの笑顔が好きだった。
いかにも好青年みたいな、爽やかなモテ男みたいな笑顔だったけど、細くて糸みたいになった目元が可愛らしくて、それが凄く気に入っていた。
「だから死んでね」
真っ白になっていく視界の中、最後に見たけんちゃんは、今まで見てきた笑顔の中で一番の笑顔だった。
嗚呼、俺って凄い幸せ者。
俺の視界は完全に真っ白になった。
死ね死ね愛してる
なんて駄文なんだ
素敵素敵なお題おかりしました!
→腐乱犬
(20110402)