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その執事、施錠





ウェストン校名物、6月4日のクリケット大会。その後夜祭、メインイベントは優勝寮のボートパレードだ。



生徒達自らも準備をする為、ガヤガヤとイベント特有の賑わいの空気が満たされた中、シエルはボートパレードの準備をしていた。



「ほう…これが青寮に代々伝わる舵手の衣装ですか。これはまた…」



箱に仕舞われていた舵手の衣装を試着したシエルを見て、セバスチャンが真顔で一言。



「予想より遥かにみっともないお姿ですねえ」

「うるさいっ」



言われても仕方ないという自覚ぐらいはあるが、言われっぱなしも気に食わない。



「普通パレードには上級生が出るんだ。仕方ないだろう」



しかも、一回しか着てないらしいのに毎年着ていたかのようにボロッボロだ。だらしなく布は垂れ、袖元もほつれ、くすんでしまっている。いったい、何をどうしたらたった一度でここまでなるのだろうか。さらにサイズが全くあっていない。



「セバスチャン、適当に裾上げを…」

「それには及びません」

「え?」

「坊ちゃんが勝つ≠ニ仰ったのです。準備を整えておくのは執事として当然でございます」



HOPKINSと記されたロゴマーク付きの鞄から取り出されたのは、シエルのサイズに合わせて作られた、舵手の衣装だった。ほんの少し照れ臭そうにしながらも、見事に着こなして登場したシエルに、出迎えたエリザベス達は笑顔を見せ、アレクシスは号泣だ。



「早く来い」

「写真とるよ」



写真を撮るのはマクミランのようで、カメラをセットしてシエルへと手を振っている。用意された花束を受け取り、シエルを含め選手一同は横一列に並び記念撮影。



「では、パレードの手順を説明する」



撮影を終えた後は、ブルーアーを中心に早速打ち合わせだ。



「我々は岸辺を出航してテムズ河を行く。ウインザー城に差し掛かったら全員で脱帽し女王に敬礼。そして帽子の花を河に落とし帰港する」



帽子に飾られた花は、最後のその為だ。



「失敗は許されない!最後まで気を引き締めたまえ!」

『『『了解!』』』





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