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「ぶわははははははっ!!」

「あー、さすがグレートブリテイン。って何でやねん!」



すました顔で立っているシエルとダリアにセバスチャンがツッコム。



「ヒッヒッ、ヒヒッ…ぶわっははは!」

「君らとはやっとられんわ!…どうも、ありがとうございました」



丁寧に最後を締めたセバスチャンに「見事だ…」と転げ落ちていた葬儀屋は起き上がる。



「まさかこの国で完璧な漫才にお目にかかれるなんてねぇ。毛ほどにも思わなかったよ…グヒヒッ」

『漫才?』

「コイツが一人で喋っていただけじゃないか」

「い〜もの見せてもらったよ」



うわ、と二人は肩を抱いてきた葬儀屋を見る。



「小生も約束を守らないとね〜〜〜」

「『…』」



引きながら二人は葬儀屋から離れた。コツ、とカウンターに置かれたのは、銀色の粉が入った小瓶。目を丸くした二人は葬儀屋を睨む。



「僕らが見たいのは、発火事件の死体だ」

「だ〜か〜ら〜〜〜これだよ。伯爵」



ぴんときた二人は眉を寄せた。



「現場からかき集めた被害者だったもの。あまりにも高温で炎上したから、灰しか残っていないのさ」



投げられてきた小瓶をシエルがキャッチする。間近で見れば、それはキラキラとしていた。













葬儀屋に見せてもらった小瓶の被害者の葬儀に参加していた三人。



「坊ちゃん、お嬢様」



セバスチャンの声に二人はそちらを見る。小太りな夫婦がやってきた。



「写真館の、ターナーでございます。この度は、ご愁傷様でした」



お辞儀をして、男は女に帽子を預けて手に持っていた四角いものから布を取り払う。



「奥様が最後に撮られた写真を、お持ちしました」

「こんなにお綺麗だったのに…」



今回の被害者の女性の婚約者だった男は、写真を目にして涙を流し始めた。



「お悔やみ、申し上げます」

「あ!」



ーーーーバリーンッ.

男は写真を受け取ろうとしたが、手元が滑り地面に落下して割れてしまった。



「本当に、お綺麗でしたね…」



それから葬儀も終わり、離れたところから眺めていた三人の横を写真館の夫婦が頭を下げて横切った。



「『!』」



その時女の方から、キラキラとしたものがこぼれ落ちた。それを見て二人がセバスチャンを見れば、セバスチャンも二人を見つめ返していた。













ーーーーコンコン.



「失礼します」



ん?とそれぞれ銃の手入れをしていたシエルとダリアはやってきたセバスチャンを見る。



「遺灰から見つかったものと、写真館のお二人から採取した物質の成分が一致しました」



手に持っていた試験管をセバスチャンは二人に見せる。



「酸化マグネシウム。写真撮影のフラッシュで、マグネシウムなどを焚いた後に残るものです」

「写真、か」

『輸入品の情報は?』

「劉様から頂戴する事が出来ました」






ーーーー「鋭いね執事君。確かに先日、ドッグランズにマグネシウムが輸入されてるよ。納品先は…ロンドンの写真館。ふっ、船一隻分のマグネシウムとは、随分大量に買い込んだもんだ。で、君達、何調べてんの?」






『…最後は余計よ』

「写真撮影にしては量が多すぎるな」

「はい。それから、被害者にも共通点が」

『共通点?』



懐からセバスチャンは紙を広げて出す。



「発火事件に遭遇した女性は皆、事件の数日前に、結婚記念の写真を撮っています。それが」

「『ターナーの、写真館』」



カチャ、と二人は銃弾をつめた。銃を身につけると、二人はさっさと歩き出す。



『行くわよ』

「事件の真相は、あの夫婦が知っている」



胸に手を当て、セバスチャンは頭を下げた。



「御意」





_207/212
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