2浮世絵町ーーーー「奴良組」本家。
「で?それのどこがボクのせいって言うんだよ?」
「こっちの週刊誌には都市伝説。こっちは河童。そして…インターネッツなるシロモノには現代妖怪≠フ情報がズラ〜〜〜〜〜〜〜リ!」
朝、庭ではひしゃくとおけを持ったリクオと雑誌や携帯を持った鴉天狗が何やら言い合っていた。
「世は………妖怪ブームになっているのです!どう責任を取るおつもりですか?」
「…………」
後ろから言ってくる鴉天狗にリクオはウザったそうにして無視している。
「だから…世間の妖怪ブームが…なんでボク?」
おけからひしゃくで水を汲み庭へと水やりをするリクオが聞くと、鴉天狗はカッと目を見開いて怒鳴る。
「若がいつまでも奴良組を継がずにプラプラしてるから、ザコ妖怪や若い妖怪どもになめられてこーやって縄張り(シマ)を荒らされているわけですよーーーー。かつてのあの快刀乱麻の大活劇、あれは何だったのですか!!」
「んなっ…………」
快刀乱麻の大活劇、とは、ガゴゼとの戦いのことだろう。
「だって…あの時は何が何だかわからなくなったんだもん!!自分が何言ったかも覚えてないし」
「そんな無責任な!!拙者はハッキリと覚えてますぞ!!オレの後ろで群れとなれとかなんとか言ってたくせにィ〜〜〜〜」
こんな言い合いを見ていた食事中の水妖たち。
「おうリクオ。朝っぱらからなーんの話をしとんじゃ」
「じーちゃんが放任主義だから、かわりにボクが怒られてんの」
「しかたなかろう?ごらんの老体…お前が早く妖怪の総大将を継いでくれねば……わし死ぬな」
「うそつかないで!!昨日も元気に無銭飲食してたくせに!!」
ゴホッゴホッと咳をして弱々しく言ったぬらりひょんを見て、内心水妖は呟く。
『(てゆーか総大将は殺しても死ななそうなんだけど)』
じろりとぬらりひょんに見られ、ビクッと顔を引き締めた水妖は黙々と素知らぬ顔でご飯を食べる。
『(エスパー…!?)』
「いいかい?ボクはフツーの人間としてくらすんだ!じーちゃんみたいにはならないからね!」
言いながら池の河童にキューリをあげた
リクオ。
「ありがとうございます若…あれ…一本だけですか」
「お前週刊誌に出とったぞ。マスコミ査定だそうだ」
そういや載っていた。ともぐもぐと食べながら水妖は今朝みた雑誌の事を思い出していた。
「若…ではせめて護身用に帯刀してください。世の中はあぶのーございます!」
「いいよ!!学校行くだけだし…」
「また学校でイジメにあいますぞ!」
え、と顔をひきつらせたリクオに続いて、屋敷内から妖怪たちが出てくる。
「え、若イジメにあってんですか?」
「ないない。学校では絶対バレないようにしてるから…」
慌てて否定するが、青田坊にはもう火がついていた。
「若は我々の大事なお人…」
「その若に何かあったら人間どもタダじゃおかねぇーーーー!!」
「何する気だよ!?たのむからご近所で出没≠オないでくれーーーー!!」
そうくぎを差すと、リクオは学校へと向かった。
「まったく…復活したかと思ったら…」
憎々しげにぬらりひょんはリクオの後ろ姿を見送りながら言う。さらに水妖も続ける。
『やはり普段は人間のままですね…あの夜の若は幻だったのでしょうか…』
さらにさらに空に浮かんでいる鴉天狗も。
「やれやれ。リクオ様が三代目を継ぐのは…いつになるのやら…」
そんな事を呟かれている事なんか知らずに慌ただしく学校へと向かったリクオは、島から宿題を見せて、パン買っといて…とパシり同然の事をやっていた。しかし、それに対してリクオは…。
「(ほめられた〜、人によろこばれた。嫌われてない。これすなわち立派な人間ーーーー。妖怪の真逆……イコールバレない)」
ジーンと感動していた。
「(リクオ君…感じ変わったなぁ。昔こんなキャラだったっけ…?)」
そんなリクオに幼なじみのカナはう〜ん?という感じだった。その時チャイムが鳴り慌てて教室へと向かったリクオ達を待っていたモノは驚きのものだった。
「だから…いるんだよね!妖怪は!」
クラスに入ってみると、教壇には隣のクラスの清継がいた。昔は妖怪なんぞいないと言い切っていた奴が妖怪について熱く語っているのを見て、リクオもカナも意外そうだった。
「まぁーーーーずいぶん昔と違う意見だこと…」
あまりの変貌ぶりに若干あきれ気味のカナ。一方のリクオはハラハラとしていた。
「ハハハ…妖怪なんているわけないじゃん…学校でそんな話しちゃったらバカに…」
「きっとそーすよ!!かしこいなー」
「清継様カッコイー∨」
「お話は変でもゆるすー∨」
「(ええーーー!!支持者がいるーーーー)」
prev|
next