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「!?何っ…」

「フハハハハハハハザマぁ見ろ!!」



人質にしようとカナたち三人へと向かったガゴゼに焦る水妖たち。



「水妖、刀借りるぜ」

『え』



リクオの声がしたかと思うと持っていた刀がいつの間にか奪われていた事に目を丸くする。



「こいつらを殺すぞ!?若の友人だろ!?殺されたくなければオレを…」



次の瞬間にはガゴゼの悲鳴が響いた。



「ヒイイイイイイ」

『『『若!?』』』



カナたちとガゴゼの間に入り、リクオがガゴゼの顔を真正面から斬りつけた。水妖たちはその行動に驚くばかり。



「なんで…なんで…貴様のようなガキに…ワシの…ワシのどこがダメなんだーーーー!?」



痛い痛いと泣きながら喚くガゴゼ。



「妖怪の誰よりも恐れられてるというのにーーーー!!」

「子を貪り喰う妖怪…そらぁおそろしいさ……だけどな…弱ぇもん殺して悦にひたってるそんな妖怪が、この闇の世界で一番のおそれ≠ノなれるはずがねぇ」

「!!」



すっかりビビってしまっているガゴゼへと近づいていくリクオ。



「情けねぇ…こんなんばっかかオレの下僕の妖怪どもは!だったら!!オレが三代目を継いでやらあ!!人にあだなすような奴ぁオレが絶対ゆるさねぇ」

「若…」

『リクオ様…』

「ひい〜〜〜〜いやだ〜〜〜〜」

「世の妖怪どもに告げろ。オレが、魑魅魍魎の主となる!!」



目を見開いた水妖は、言葉の意味を理解すると徐々にその目を期待に輝かせた。



「全ての妖怪は、オレの後ろで百鬼夜行の群れとなれ」



ガゴゼは、リクオの手により始末された。



「すげぇ…あんな小さいのに…」

「カッコイイ…」

「妖怪って…本当にいたんだ。あんなスゴいんだ…」



子供たちからは歓声の声があがる。



「この達磨…知っていながら今気づいた」

『達磨様?』



急に呟いた木魚達磨を水妖は不思議そうに見る。



「闇世界の主とはーーーー人々に畏敬の念さえも抱かせる、真の畏れをまとう者であるとーーーー」



その時瓦礫の間から朝日が差し込みリクオを照らした。

ーーーードサッ.



『…………?リクオ様…?』



急に倒れたリクオを不思議に思いながら水妖が呼ぶが返事がない。



「ど…どうしたの水妖!?」

「!?」

『きゅ、急に倒られて…』

「まさか…やられていたのか!?」

「若ーーーーっ」



慌ただしくリクオに近づく水妖たち。そんな水妖たちの耳に届いたのは…。



「人間に…戻っている…?」



木魚達磨のそんな一言だった。聞いた瞬間、全員の目が点になっていた。そんな中ハッと水妖が口を開く。



『まさか…四分の一…血を継いでるから、一日の四分の一しか妖怪で…いられない…とか…?』



その場がフリーズした。

……………。



「ええーーーーなんですってぇえーーーー!?」

「そ…それって…!!」

「どーなるぉーーーー!?」

「若アアアーーーー!!」





妖怪たちの声が響き渡った数年後ーーーー。





「…………今年も……またダメか…?」

『…………』

「ダメですねぇーーーー…」

「では、早朝までおよびましたが…今回の議会でも、奴良リクオ様の三代目襲名は先送りということで…」



それを合図に集まっていた妖怪たちはぞろぞろと部屋を出て行く。水妖は残念そうに、やっぱりかと肩をおとした。



「ぐぅう〜〜〜〜……誰も賛成してくれん…」

『しかたありませんよ…総大将』

「普段の若が、アレでは」



木魚達磨が指差した先には、十二歳へと成長したリクオの姿があった。



「じゃ…お母さん、いってくるね!」

「あらリクオ早いのねぇ。お弁当用意してないわ〜」

「いいよ…購買で何か買うから」

「あ、若!!おはよーございまーす!!ご支度を…」

「おはよ。いいよ、自分でやったから!!」



幼いときとは違い、しっかりした真面目でいい子な…とにかく、イタズラなんてしそうにないリクオがそこにはいた。今時の思春期の男子にしては出来た子供だと喜ぶべきだが、それを見たぬらりひょんはさらに唸る。



「なんで…あれ以来変化せんのかの〜…」

『あの時≠ヘ立派な妖怪になるものと思いましたが…』



こちらに気づいたリクオが駆け寄ってきた。



「あ、おじいちゃんまた会議?」

「う…ム…」

「ダメだよ!悪巧みばかりしちゃ!ご近所に迷惑かけないよーに!じゃ!学校行ってきます!」



元気よくリクオが去った後、これでもかと項垂れたぬらりひょん。



「うーむ。むしろ、立派な人間≠ノなってる気がしますなぁ…」



木魚達磨の言葉に水妖は、ははは…と失笑しながら頷き、気を取り直して空を見上げた。



『…でも、私たちも昼は…あまり動くことができませんし…』

「だが…夜になれば…」

「いつまでワシが総大将でおりゃあいいんじゃ。早う隠居して楽にくらしたいんじゃがの〜〜〜」



はーーーー。と深く長いため息をはきながらぬらりひょんがぼやく。



『リクオ様が三代目を継いでくださればいいんですが…』

「あいつが三代目を継ぐのは…いつになるんじゃろうのーーーー」

「さぁて…どうなりますか……?」







関東平野のとある町・浮世絵町ーーーーそこには、人々に今も畏れられる極道一家≠ェあるというーーーー…が、立派な人間になるため、三代目は奮闘中でございます。



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