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オカマは男のバカさも女のズルさも全部知ってる




「ふざけんじゃねエエエエ!!テメーの蛮行によってどれだけの人々が苦しんでるのかわかってんのかァァ!!」
「やかましーわクソババアぁぁ!!回覧板まわすの遅れたくらいで、何でそこまで言われなきゃならねーんだァァ!?」


外から聞こえてきた声に目が覚めて寝ぼけながらも外に出た。そこにはすでに起きていた銀ちゃんがおり、下にはお登勢さんと西郷さんとかいうオカマのおっさんがいた。つーかうるせーぞそこの妖怪共。それを思ったのは私だけではなかったようだ。


「オイ、うるせーんだよそこの妖怪二匹。今何時だと思ってんだ。そして俺の血圧がいくつだと思ってんだ」
「うるせーんだよこのダメ人間が!!」
「まっとうな人間はとっくに活動始めてんだよ!」


え、今何時?


「お前ら自分のこと人間だと思ってんのか?それは遠い昔の話だよ」
『そーだよ』


隣で銀ちゃんの言葉にうんうんと頷いていると銀ちゃんが消えた。あれ?


「私にたてついたからには、落とし前つけてもらうよ」


下を覗き込めば、銀ちゃんが白眼を向いて倒れていた。え゛?マジ?顔を青ざめていると、ギロッと西郷さんがこっちを見たので私は猛スピードで着替えると西郷さんのもとへと走った。


「コイツらは預かるからね」
「好きにしな」


ちょっとババアぁぁ!?


「新八ィあのモンスター何アル?」
「ん?アレはお登勢サンと同じく、この街を支えるかぶき町四天王の一人、鬼神マドマーゼル西郷」


引きずられていく私らを見ながら、新八と神楽がそんなことを言っていた。つーか見てたなら助けろやァァァ!!





「みんな〜今日から入ってもらうことになった、パー子ちゃんときんちゃんよ」


…何やってんだろ私ら。私らの前には青髭のオカマ共が大量にいた。


「いやだ〜カ〜ワ〜イ〜イ〜。何、パー子って?」
「天然パーマのパー子よ」
「おきんは?」
「天然金髪のおきんよ」
「ちょっとォママ〜勘弁してよ〜私の客とられちゃうわ〜」


何だよおきんって。ヤだよそんな源氏名。つーか銀ちゃん似合ってんのか似合ってないのか微妙すぎて笑うに笑えねェ。


「スイマセン。おなか痛いんで早退しまーす」
『私頭痛いんで早退しまーす』
「逃げられないわよ〜」


逃げようと方向転換した私らの頭をガッとつかんだ西郷さん。


「かぶき町で生きてくってことがどうゆうことか、アンタらに教えてやるよ」
「『いやもう知ってますから住んでるんで』」
「アンタらが化け物呼ばわりしたオカマ達がどれ程、気高く生きているか教えてやるよ」
「いやもうホント勘弁してください。一応僕主人公なんで」
『私もこのサイトの顔なんで。しかも私本物の女ですけど』


誰か助けてヘルプミー。


「オラ、新入りにオカマ道叩き込んでやんな!」


ドン、と列んでいたオカマ達の前に押し出された私ら。つーか私はオカマじゃねーし。正真正銘のおんな……。


「オイ気のせいか架珠。すごく見知った顔が…」
『銀ちゃん、気のせいじゃないよ』


私らは顔を上げた先にいたオカマを見て固まった。


「『何やってんだヅラ?』」
「ヅラじゃない、ヅラ子だ」


ああ、ヅラだ…。つーかお前似合いすぎなんだよ。もうマジのオカマになっても活きていけるぞ。殴りたい。ヅラになぜここにいるのかと聞いてみると、そばの注文の順番でもめて西郷さんに化け物と言ってしまい、ここで働かされているとのこと。


「以来、なんとか抜け出す機会をうかがっているんだが。オイそこもっと腰を振れェェ!!」


舞台上で踊っていた私らはノリノリで一緒に踊っているヅラに冷めた目を向ける。


「ヅラ、長くここの空気を吸いすぎたな。お前はシャバに戻るのはもう無理だ」
『もうここで働きな』
「ふざけるな。俺には国を救うという大仕事があるんだ。こんな所でこんな事をしてる暇はない」
「こんな所でノリノリで踊ってる奴に国も救われたくねーだろうよ」


ごもっとも。


「ちょっとォ〜ヅラ子もパー子もおきんもノリが悪いわよォ」


舞台袖で三味線を弾いていた、確かアゴ美とか言うオカマが言ってきた。


「そんなんじゃお客様気分悪くしちゃうでしょ」
「何言ってんのよアゴ美。この気だるさが私の売りなのよ」
『今時は真面目より不真面目なのよアゴ美』
「誰がアゴ美だコルァァ!!」


あれ?違った?


「パー子もおきんも、さっき紹介しただろう。この人はアゴ代だ」
「違うわァ!!あずみだボケェェ!!」
「オイオイ何やってんだよ!グダグダじゃねーかよ!」
「「『!』」」


声に客席を見ると、すだれヘアーの酔ったおっさんがこちらを見ていた。なんだ?


「こっちはオメーてめーらみてーなゲテモノわざわざ笑いに来てやってんだからよォ。もっとバカなことやってみろよ化け物どもよォ!!」


そんな罵声を浴びせられ黙っている私らじゃなく、私と銀ちゃんは凄みながら前へと出た。


「何だとこのすだれジジイ。てめェその残り少ねェ希望を全て引き抜いてやろーか!?」
「止せパー子」
『グダグダはてめェの頭だろーが!ハゲ散らかしてんだからちったー大人しくしてろや!!』
「お前も止せおきん」


止めるヅラを振り払おうとした時、おっさんの背後から頭を鷲掴みにした。


「お客様。舞台上の踊り子に触れたりヤジを飛ばすのは禁止と言いましたよね?」


西郷さん?


「オカマなめんじゃねェェェ!!」


西郷さんは言うとおっさんを座席へと投げ飛ばしていた。そんな西郷さんを私らはぽかんと眉根を寄せて見ていた。


「女より気高く、男より逞しく。それがママの口癖」


それから私らはアゴ美と一緒に買い出しに出かけて、今はその帰り道だった。


「私達みたいな中途半端な存在は、それぐらいの気位がないと世の中わたっていけない。オカマは誰よりも何よりも強くなきゃいけないの」
「それじゃあアゴ美も強いの?アゴ美のアゴは何でもくだけるの?」
「なんでアゴ限定の強さなんだよ」


アゴ美だしね。


「それにしても西郷殿の強さは常軌を逸しているな。アレはただ者ではあるまい」
「ええ、昔はスゴかったらしいわよ。なんだっけな、えーと…白フンの西郷だとか呼ばれてて、なんかよくわかんないけど白い褌一丁で暴れまわった豪傑らしいわ」
「いや、それだけの情報じゃただの変態じゃねーか」
『どっこもスゴくないよそれじゃあ』
「…白フンの西郷……どこかできいたような」
「お前の父ちゃんオーカーマ!」


ん?今一番敏感なオカマの言葉に、私らはなんだ?と下を覗き込んだ。


「キショいんだよお前!!」
「オラ、かかってきてみろよ」
「やっぱコイツもカマ野郎だ!」


なにいじめ?助けに行こうかとしているとアイスを持っていた銀ちゃんとコーヒーを飲んでいたヅラが下のガキ共の頭に口からこぼし始めた。きったね!!


「ギャアアアアアアアア!!」
「オカマビームだァァ!!さわったらオカマになるぞォォ!!」


なるわけねーだろ。私とアゴ美はその間に下へと行きいじめられていた少年に近づく。


「逃げろォォ!!」


はっ、一昨日きやがれ。


「ボク、大丈夫?」
『オカマをバカにするなんていい度胸してるよアイツら』
「!てっ、てる君!!」


顔を上げた少年にアゴ美が驚いたように叫んだ。え、誰?



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