×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -


コンプレックスがデカイ奴は成す仕事もデカイ




「う…あ…あ、赤い着物の女が…う…う、来る、こっちに来るよ」


うぐっ!と汗をかきながらうなされるゴリラ。


「近藤さ〜ん、しっかりしてくだせェ。いい年こいてみっともないですぜ寝言なんざ」


寝言じゃないだろコレ。魘されてんだよ…同じか。


「…これはアレだ。昔泣かした女の幻覚でも見たんだろ」
「近藤さんは女に泣かされても泣かしたことはねェ」
「じゃあアレだ。オメーが昔泣かした女が嫌がらせしにきてんだ」
『え、マジ?』
「そんなタチの悪い女を相手にした覚えはねェ」


話し合う私らの横では、なぜか沖田クンがゴリラの首を羽交い締めにしている。ゴリラ、お前ホントに上司か?


「じゃあ何?」
「しるか。ただ、この屋敷に得体のしれねーもんがいるのは確かだ」


えぇー…嘘でしょ?嘘だろそれは…。私オカルト系苦手だっつのに。


「…やっぱり幽霊ですか」
「あ〜?」


新八の言葉にドキッとする。


「俺ァなァ、幽霊なんて非科学的なモンは断固信じねェ。ムー大陸はあると信じてるがな」
「?」


言いながら隣にいた神楽の頭に鼻くそをつける銀ちゃん。あれ?なんか忘れてる気が…。


「アホらし付き合いきれねーや。オイてめーら帰るぞ」
『銀ちゃん…』


そのまま帰ってよかったがどーしても気になったので話しかける。


『なにコレ?』


立ち上がった銀ちゃんはなぜか私と神楽の手を握っていた。


「なんだコラ、女の子は恐いだろーと思って気ィつかってやってんだろーが」
「銀ちゃん手ェ汗ばんでて気持ち悪いアル」


…あ、思い出した。


「あっ、赤い着物の手!!」


ーーーーガシャン.

いきなり沖田クンが指差しながらそう言うと、銀ちゃんは押し入れへと飛び込んだ。もちろん赤い着物の女なんかいない。


「…何やってんスか銀さん?」
「いや、あのムー大陸の入口が…」


なんで押し入れ?


「旦那、アンタもしかして幽霊が…」
「なんだよ」
『恐いんだよね銀ちゃん』
「んなわけねーだろ。つーか、お前こそ幽霊恐いだろ」
『まさか、私は別に…』
「お嬢…土方さんコイツは…アレ?」


憐れんだような目でこちらを見たかと思うと何も言わず隣にいる多串くんに話しかけた沖田クン。んだよコイツ。しかし、隣に多串くんの姿はなく、何処だと探せば壺に頭突っ込んでいた。


「土方さん何をやってるんですかィ」
「いや、あのマヨネーズ王国の入口が…」


…ああ、コイツもか。私らは回れ右。


「待て待て待て!違う、コイツはそうかもしれんが俺は違うぞ」
「びびってんのはオメーだろ!俺はお前、ただ胎内回帰願望があるだけだ!!」


胎内回帰願望とかなんだそれ。


「わかったわかった。ムー大陸でもマヨネーズ王国でもどこでもいけよクソが」
「「なんだそのさげすんだ目はァァ!!」」
「ん?」


呆れかえっていた私は神楽の声に銀ちゃん達を見て固まった。それは他の三人もだった。


「なんだオイ」
「驚かそうたってムダだぜ。同じ手は食うかよ」


いやいや違うよ。そーじゃないよ…え゛?あれ?


「……オイしつけーぞ」
「「『ぎゃああああああ!!』」」
「オッ……オイ!!」


私らは慌てて部屋から逃げ出した。


『しししし新八!!み、みみ、見た!?』
「みっみっみっ、見ました!!見ちゃった!ホントにいた!ホントにいた!」
「銀ちゃああん!!」
「奴らのことは忘れろィもうダメだ」


全速力で走りながら話していた時、部屋から衝撃音が。驚いて振り返って見れば二人が走ってきていた。


「「うおおおおおおお」」
「きっ…きり抜けて来た!!」
『いや待った!!』


よく二人の背中を見てみた私らは驚愕し顔をひきつらせた。


「しょってる!?女しょってるよオイ!!」
『こっち来んなァァァ!!』


必死の思いで逃げた先は離れの倉庫。隠れた直後、辺りに悲鳴が響いた。


「やられた。今度こそやられた」


頭を抱えて新八が言う。


「しめたぜ。これで副長の座は俺のもんだィ」
「言ってる場合か!」
「オイ誰か明かり持ってねーかィ?」
『蚊取り線香なら持ってるよ』
「なんで持ってんですかィ?」


蚊が多いからだよ。


「なんだよアレ〜なんであんなんいんだよ〜」
「架珠、銀ちゃん死んじゃったアルか?ねェ死んじゃったアルか」
『……』


な、なんとも言えない…。


「実は前に、土方さんを亡き者にするため外法で妖魔を呼び出そうとしたことがあったんでィ。ありゃあもしかしたらそん時の…」
「アンタどれだけ腹の中まっ黒なんですか!?」
『てかアンタ何者だよ!?』


本当に妖魔呼び出すとか怖いよ!もうこの子が怖いよ!つかそこまでして副長の座がほしいのか!?


「元凶はお前アルか。おのれ銀ちゃんの敵!!」
『だーもう!!せまいのに暴れんじゃない!!』
「なんでお前ら会うといっつも…ん」
『どした新八』


急に黙り込んだ新八を見ると、一点を見て固まっていた。なんだ?と思いそちらを見ると、入口の隙間から覗く目と目があった…い゛っ?!


「『ぎゃああああああああ』」


腰が抜けた私はその場にへたり込んだ。だ、だって…え゛っ?なんでいるのなんでいるのなんでいるの!?


「でっ…でっでで出すぺらアどォォォ!スンマッセンとりあえずスンマッセンマジスンマッセン!」


新八なんかあまりのことに変なこと言ってるし。


「てめーらも謝れバカヤロー!人間心から頭さげればどんな奴にも心通じんだよバカヤロー!!」


動揺すんのはわかるけど、そのせいであの神楽と沖田クンの頭を地面に叩きつけるなんて凄いよ新八。人間窮地に追いやられると何でもするんだね。


「あのホントォ!くつの裏もなめますんで、勘弁してよォマジで」


あれ?


「僕なんて食べてもおいしくない…」
『ちょっと新八』
「なんですか。架珠さんも謝ってください!」
『いや、いないよアイツ…』
「え?」


入口を指差しながら言うとさげていた顔をあげた新八。


「アレェ?…いない」


腰が抜けたのも治り立ち上がって入口へと近づく。


「な…なんで」
『?』


すると隙間から出た風にのって煙と共に匂いがした。


「蚊とり線香…」
『…まさか』


私らは隊士の奴らが眠っているところへと向かった。


『新八、そっちはどう?』
「ありました。架珠さんの方は?」
『こっちもあるよ』


私らは隊士共の体を調べたが、どいつも同じようなキズがあった。


『幽霊にやられた奴には一様に、蚊にさされたようなキズがある…』
「あれは、幽霊なんかじゃない」
『でも、だとしたらなんだっていうの?』
「……もしかしたら、天人かも」
『天人ォ!?』


蚊の天人ォ!?いんのかそんなの……。





……いた。

新八の予想通り、幽霊と思われていた赤い着物の女は蚊の天人だった。今は血が戻って復活したゴリラ共が尋問している。


「…ったくよォ。幽霊にしろ蚊にしろ、ハタ迷惑だってのに変わりはねーな」


縁側で私と銀ちゃんと多串くんはその様子を見ていた。


「ハタ迷惑なのはテメーらだ。報酬なんぞやらんと言ってるだろ、消えろ」
『それにしても、鬼の副長さんが幽霊が恐いなんてねェ』
「アレはお前びびってたんじゃねェ、びっくりしてただけだ。大きな違いだぞコレは。お前らは明らかにびびってたけどな」
『はァ?私らがいつびびってたって?』
「アレはお前、企画に乗ってやっただけだ。むしろ俺はこーゆうの好きだぜ。これから毎回やろーか…」


ーーーーガララ.


「銀ちゃんそろそろ帰…!」
『……ど、どうした神楽?』


私はびびっていたのをごまかすように障子を開けた神楽を見上げる。その時哀れんだような目で見られてイラッとしたが。


「…架珠」
『なによ』
「…この二人何やってるアルか?」
『…だってよ?』
「「いや、コンタクト落としちゃって」」


縁の下に潜り込んでいる二人の言い訳は一緒だった。一生仲良くそこでそうしてろ。


next.

back