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海の水がなぜしょっぱいかだと?オメーら都会人が泳ぎながら用足してくからだろーがァァ!!




「今年の夏はエイリアン一本釣りだ!」
『……は?』


とある夏の日。パチンコから帰ってきた銀ちゃんは突然そんなことを言い出した。とうとう暑さで頭沸いたのか?


「架珠、神楽、準備しろ。海行くぞ海」
『なんなの急に』
「銀ちゃん、昨日海行こうって言ったらヤだって言ってたネ」
「昨日は昨日、今日は今日。人は一日一日で変わってくんだよ」
『凄いね。言う人に限っては言い訳にしか聞こえない』


私は休ませていた団扇を扇ぐ手をまた動かす。エアコン欲しいなァ…金ないけど。


「いーから、海行くぞ!神楽もそれでいーだろ」


げんきんな神楽はそれでいーよーで、大はしゃぎしながら新八に連絡をしにいった。


「オラ架珠、お前も準備しろ」
『え〜…ヤだよメンドーな…私行かない』


パタパタと団扇を扇ぎながら言うと、バッと団扇を取られた。


『ああ!なにすんのさ』
「海行くっつってんだろ」
『だからヤダっつってんだろ。こんな暑いのに何でわざわざ外に行かなきゃなんないの』
「エイリアンを捕まえた奴には賞金だったから行こうと思ったんだが、今回は新八、神楽、俺のヤマワケで……」
『五秒で支度しな。愚図は嫌いだよ』
「さすが架珠ちゃ〜ん」





「は?えいりあん退治?え?ホントに来たの?」


問題の海に来たがえいりあんの影響かビーチにはだぁ〜れもいない。たった一つ営業していた「海の家・ビーチの侍」のオッさんに話を聞くと、そいつが賞金をかけた奴だった。


「いや〜でもホント来てくれるとは思わなかったよ。おじさんもさ〜、酒の席でふざけ半分で発言したことだけにまさかホントに来てくれるとは…」


……は?

ーーーージュウウウウ.


「ぎゃああああああああああああああああああ!!」


私と銀ちゃんはオッさんの顔を熱々の鉄板に押さえつけた。


『オッさ〜ん、ふざけたこと言っちゃァダメだよ』
「酒の席でふざけ半分?おじさーん、こっちは生活かかってるから真剣なんだよ。男は冗談いう時も命がけ。自分の言葉に責任もってもらおう」
『それができないなら軽々しく賞金なんて言葉使っちゃダメだよ〜』
「待ってェェ!!おちついてェ!!大丈夫!金ならちゃんとはらうから!ちゃんと用意してるから」
「ウソつくんじゃねーヨ。こんなもっさりした焼きそばしか焼けない奴、金もってるわけないネ。どーせお前の人生ももっさりしてたんだろ。ほら言ってみろヨ。モッサリって!はい、モッサリ〜!」
「ちょっとォォ何売り物勝手に食べてんのォォ!!」


横からチョロッと食ったけど、確かにもっさりしてた。


「おじさんだってこう見えても海の男だぞ!金は確かに無いが、それ相応の品を礼として出すって!」


ヘェ〜……。


『じゃ、見せてもらおーじゃないの』
「えいりあん退治はその後だ」


そしてオッさんの言うそれ相応の品を見た瞬間、私らはこいつをエサにしようと思った。


「素敵なシャツですね…銀さん」
「そーだな。思春期に母ちゃんがもし着てたらドメスティックバイオレンスの引き金になりそーだな」
『父ちゃんでも同じことが言えるよね』


オッさんが渡したのはビーチの侍とプリントされたシャツだった。


「そのシャツはねぇ、ウチの店員しか着ることが許されない非売品のレアモノだよ。これで君達も海の男の仲間入りだ!だから俺を解放しろ!海の男はこんなことしないぞォォ!!」


木にくくりつけ海に放置したオッさんが叫んでいるが、砂浜に座っている私らは誰も動かない。


「なかなかかからねーな…えいりあん」
『エサがダメなのかな…』
「銀さん架珠さん、あの…言いづらいんだけど、全てをこのえいりあん狩りに賭けてたんで…帰りの交通費が」
『…ないんだね』
「どうしましょ?」
「やるしかねーだろ」
「「『!』」」


横で寝転がっていたマダオの言葉に、私らはマダオを見る。


「やるって何を?」
「誰もいない海に、一匹の化け物と三匹のビーチの侍。俺達が護らずに、誰がこの海を護るってんだ?」


……マダオがなんかめんどくせーこと言い出した。そういう熱い感じは持ち合わせてない。だからなんか一人で語っているマダオの話を最後まで聞くなんてことはせず、私も銀ちゃんも新八も泳ぎに行った。冷たい水が気持ちいいね〜。


「オイぃぃぃみんな逃げろォォ!!」


は?なんか浜辺でマダオが叫んでる。


「ダブルパンチだ!!二つの恐怖が今まさに!!」


浜辺の方からマダオが何か叫んでいるが、イマイチ私らの位置からは聞こえない。


「?なんだァ?」
『聞こえないんだけど』
「ダブルパンツ?パンツ忘れて来たんですかね」


んなこと叫ぶか普通?


「後ろォォ!!志村後ろォォォ!!」
『後ろ?』
「なにを?」
「ぎゃあああ」
「!」


背後からの悲鳴にそちらを見た私らの目に映ったのは、ゴツい体のデッカイ魚のえいりあんがエサにしていたオッさんをくわえてジャンプをしていた光景だった。次の瞬間には、えいりあんは海へとダイブした。


「ぎゃああああ!!」
「出たァ!マジで出た!マジで出たよオイ!」
「うわァァァ!!」
『えいりあんマジでいたのか!!』
「あわばばばば全然スピード出ねェ!」


そりゃ浮き輪じゃねぇ…?だからと言って助けようとはしない。自分が可愛いんだよ人間。


「待てェ新八てめェ何スイスイ泳いでんの!お前らしくない!」


さっさと泳ぐ私の少し後ろでは、華麗に泳ぐ新八がいた。びっくりなんだけど!


「お前は何やってもダメ、ツッコミ以外何も出来ねーキャラのはずだ、そーだろ!!」
「いだだだだ眼ェ飛び出すって!眼ェ飛び出すって!」


後ろから新八のゴーグルを引っ張る銀ちゃん。そのせいでゴーグルがごっさ眼に食い込む新八に同情の眼差しを向ける。


「てめーらァァァ!!」


ん?


「さっきはよくもやってくれたな。海の男の恐ろしさを思いしらせてやる!!」
「うおおおお来たァァ!!なんか合体してるぞ!!」
『気持ち悪い来るなァァ!!』


必死に私らは泳いで逃げる。あいつもうあのまま食われればいいのに!


「ふんごおおおお!!」


あと数十メートルで浜辺というところで神楽の声が聞こえてみれば、どっからとってきたのかデカい岩を持ち上げてた。なぜか岩の上にはマダオが乗っている。多分神楽はアレをえいりあんにぶつけるつもりだろう。


「ぎゃああああ!!」


思った通り神楽はマダオが乗ったまま岩を投げた。だが……。


「あれ?」
「オイこれ…」
『方向が…』


明らかに私らの方に……!!

ーーーードパン.


「間違えた」


間違えたじゃねーよ!!神楽のコントロール音痴で岩が直撃した私らは水中へと沈んだ。慌てて私は海面へとあがると、辺りには誰もいなくて皆はどーしただろうと思っていると、マダオが出てきた。


「オイ!みんな無事か?」
『私は無事だよ』
「ああ架珠さん。他のみんなは…」


そこで気配を感じて見れば、そこには海面から上半分を出したえいりあんの姿が。


「食いたきゃ食えよ。てめーの胃袋に入って海をまわるのも悪くねー」


なんかカッコつけたこと言ってるマダオの隣で、えいりあんの背中を見た私は『あ』と声を出した。


『マダオあれ』
「!」


えいりあんの背中には、気絶したみんなが乗せられていた。





「…ということよ」


公園のベンチにアイスを食べながら私と銀ちゃんとマダオはいた。


「まっ、俺の海に対する愛情が伝わったんだろーな。理屈じゃねーよ男は…魂で語るのが男だよ」


マダオのまたくだらない話を聞きながら私らは新聞を見る。


「あんな身なりだが奴ァ悪い奴じゃねェ。あいつはきっと、ただ俺達と遊びたかっただけなんだ」


そこで私らは一つの記事に目を止めた。


「俺にはわかる。海にはイイ奴しか生息してねーからな。海につかってるうちに、みーんなアクなんてぬけちまうのさ」


カッコつけて去っていくマダオの背中を私らは見送ると、また新聞へと視線を戻した。


『アクね〜』
「なんかモノスゴいアクの強い奴が写ってるんだが…」


新聞の一角には、あの海の男とか色々ほざいてたオッさんがピースサインで写っている。えいりあんを利用して、そこの海は今じゃ大人気になっていた。


「まっ、いっか」


今日も暑い青空に、銀ちゃんは新聞を投げ出した。アイスでも買おうかな。


next.

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