幼なじみというより家族

今年のポケモンリーグ開会式からしばらく経つ。
キバナは順調にターフタウン、バウタウンのジムをクリアし、エンジンシティに戻ってきていた。3つめのジム挑戦前にワイルドエリアで一度ナスタと落ち合うことになっており、強くなった自分のポケモン達を彼女に見せるのを楽しみにしながら、階段下に見える姿めがけて駆け下りる。そのままウィンディのふわふわの身体にダイブすれば、おかえりキバナ、と幼馴染みの柔らかい声が聞こえた。

「久しぶりだなナスタっ!オレさまのポケモン達、めちゃめちゃ強くなったんだぜ!!」

はやく見てくれと彼女に詰め寄れば、嬉しそうににこにこ笑っていたはずの幼馴染みは途端にその顔色を真剣なものに変え、眉根にシワまで寄せてこう言った。

「え、ちょっと待ってキバナ・・・背、伸びた?」
「ホントかっ?!」

ポケモンの話より先にでたそれに驚きながらも、たしかに、彼女より少し低かった身長が、同じくらいか少し高いくらいになっている気がすることに喜びが湧き出る。くるりと身体を反転させて後頭部を合わせると、どちらが上か分からないくらいの差になっているようで、くらべる指の先がスッと滑った。

「越したか?」
「えっ、まだだよっ!」

お互い頭のてっぺんに手を当てながらあーだこーだと言い合っていると流石に騒ぎ過ぎたのか、ゲートのところに立っているリーグスタッフに階段の前を塞ぐんじゃないと苦笑いをされてしまった。



こもれび林に移動してテントを張ると、ナスタは待ちきれないとばかりにキバナのポケモン達を出すようにせがんできた。

「あっ、ビブラーバになったんだね!」

ナックラーから進化したビブラーバは、タマゴの時からナスタと共に育ててきたポケモンで、キバナの手持ちの中でも彼女の思い入れの強いうちの一匹だろう。指先を伸ばせばハネを鳴らして擦り寄るビブラーバも、嬉しそうに彼女との再会を喜んでいるようだった。

「うん、羽の色もキレイだし、健康的に育ってるみたい!技は今は何を覚えてるの?」
「だいちのちから、かみくだく、ドラゴンテールに、はがねのつばさ、か?」

キバナの手元のロトムを覗き込み、ビブラーバの個体値を確認しながら、ナスタは技の組み合わせや育て方にまで口を挟む。どういうふうに育てるのが一番手強くなるのか、キバナのポケモン達が生き生きと戦うためにはどんな戦法が良いか。時にはキバナ以上に研究し、アドバイスをくれる幼馴染みは、昔からキバナの一番の相談相手だ。

「なるほど・・・メインで使う技が物理系なら、攻撃を育てる方が良いかもね。この辺りだと、コノハナとかヤンチャムとかを相手にすると良いと思うよ」
「そうだな!ゆくゆくはじしんを覚えさせてだな・・・」
「じめんタイプの強力技だね!強そう!」

これからどんな育て方をしていきたいか、チーム編成はどうするべきか、重ねて話が膨らんでいく。

「あ、でもまずはカブさんに勝たないとね」
「ナスタお前、このオレさまの強さを疑ってるのか?」
「はいはい、キバナさまなら勝ってくれるって信じてますよ」

育てるのはまだこの先、まずは目の前のジムを突破することだったと思い出して、こんなに呑気にしている場合ではなかったなと思い立つ。ナスタに成長したところを見せたいからと、ナックラーのレベル上げだけをしていれば良いわけではないのだ。

「よしっ、じゃあオレはカブさんのところに行く前にもうちょっとポケモン達を育ててくるな」
「うん、いってらっしゃい」

ナスタは今日はこの辺りにいるようで、ひらひらと手を振ると自分の仕事を広げていた。彼女がワイルドエリアに出ている時は、よほど位置が合わないことのない限り、キバナはナスタのキャンプを拠点にして探索に出ている。このまま、カブさんのジム戦も彼女は観戦に来るに違いない。バトルしているところを見せてこそ、己の成長ぶりを感じてもらえるだろうと気合いをいれる。ナスタが驚くような試合をしてやろうではないか。

  その後、キバ湖の周りでトレーニングをしていたキバナは、今回のジムチャレンジに挑んでいる中でも最大のライバルと言うべき少年と出会い、バトル好き同士意気投合してナスタのところへ一緒に連れて行くことになる。
二人がすでに顔見知りだったと知るのは、その少し後のこと。



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