最初のはじまりの出会い

それは、ポケモンリーグへはじめてチャレンジするにあたって、エンジンシティで行われる開会式に向かっていた時のことだった。

「そこのきみ!大丈夫?」

ワイルドエリアに入ってから、ここまで一緒に来ていたソニアとは別れてそれぞれで向かっていたのが仇となったのか、なかなかたどり着かない目的地に、高レベルの野生ポケモンばかりで動けなくなり、そんなうちに日も暮れて、物陰に隠れるように夜を過ごすしかないと思っていた時、俺を見つけて声をかけてくれたのが彼女だった。

「随分ぼろぼろだけど、レベル上げ?あまり無理をさせちゃダメだよ」

慌てた様子でこちらへ駆け寄って、まずダンデのすぐそばにいたリザードを、そして惜しむことなくキズぐすりやげんきのかけらで手持ちのポケモン達を回復し、それからそのあまりの勢いに驚いていたダンデの手当ても軽くしてくれた彼女は、ナスタと名乗った。ブリーダーだそうだが、ダンデより少し年上くらいの、まだまだ年若い少女だった。

「エンジンシティに行くだけの予定だったので、」
「エンジンシティ・・・?ナックルシティからきたの?」
「いや、ハロンタウンから来ました」
「えぇっ・・・そしたらもうエンジンシティを過ぎちゃってるよ」

彼女はダンデの方向音痴ぶりを聞いて驚いて、道具などの用意が不十分だったことにも納得がいったらしい。もう夜も遅いし、朝が来たら送ってくれると言って、その日は彼女のキャンプにお邪魔することになった。

「リザードが相棒なんだね。一番懐いているみたい」
「貴方の相棒はウィンディ?」
「うん。私のことを一番よくわかってくれている大切な子だよ」

ダンデのポケモン達の分までカレーを振る舞ってくれた彼女と、たくさん話をした。好きなポケモンの話や、育成の話、ダンデのリザードの話から、彼女のウィンディの話。特にほのおタイプのポケモンについては2人とも相棒が同じタイプなのでかなり盛り上がり、気がついたら随分夜が更けていた。

「もういい加減寝なくちゃね。テントの寝袋使って大丈夫だから」
「えっ、」
「私はウィンディがいるから気にしないで。いつもあんまり使わないんだ」

ポケモンの育て方に詳しく、色々と知識や考えの豊富な彼女と話すのはとても楽しく、もう少し話していたかったけれど、あまり夜更かしするのも良くないからと言われてしまえば仕方がない。焚き火を消してからダンデに自分のテントを譲った彼女に、それは申し訳ないだとか、俺が外で寝るだとか言う隙もなく、彼女はテントの脇でウィンディの丸くなったお腹のところに包まるようにして、ダンデにおやすみ、と柔らかく小さな声で囁いた。それにどういうわけだか少し照れてしまって、何も言えずに仕方なく彼女のテントで眠ることになってしまった。

翌朝、軽めの朝食を食べながら話をしたのは、彼女の幼馴染みも今年のジムチャレンジに参加するということだった。

「年もたぶんきみと同じくらいかな」
「どんな子ですか?」
「ドラゴンタイプが好きでね、ナックルジムのトレーナー達を相手にずっとバトルしてたんだよ。強いから勝ち進むと思う」
「そうか!」

彼女の言う幼馴染みが勝ち進むのなら、きっとどこかで出会えるだろう。ダンデももちろん勝ち進む気でいるので、今からその子と会った時のことが楽しみになった。ドラゴンタイプ使いになら、やはりこおりかフェアリータイプを手持ちに入れておいた方が良いだろうか。まだ会ってもいない相手にすら対策を考えてしまうほどには、ダンデはバトル好きの自覚がある。

「私の幼馴染みとダンデくんは仲良くなれそう」

エンジンシティの方まで送ってもらいながらも、そんなようにバトル思考になっていたダンデを見ながら彼女は楽しげにくすくすと笑った。その表情を見ているとなんだかダンデまで嬉しくなって、彼女にバトルについても色々と話しながら歩いたので、あっという間にエンジンシティのゲート前まで着いていた。

「じゃあジムチャレンジがんばってね」
「はい、ありがとうございました!」

迷ってしまって大変な目には遭ったけれど、彼女と出会えたことはダンデにとってとても嬉しいことだった。エンジンシティで待ち構えていたソニアにこっぴどく怒られながらも、帰り際にアーマーガアの背に乗って、こちらへ柔らかく微笑んで手を振る彼女の姿が、しばらく頭の端から離れなかった。

「また会えるだろうか、」
「・・・ちょっとダンデくん、聞いてる?」

思わずそんな呟きを溢してしまい、ソニアからの説教の時間が伸びてしまったのは失敗だった。



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