澤村大地、リア充疑惑?梟

合同合宿の主将会議メンバーが入っているグループSNSが、ピコン、と音を立てた。開いてみると連絡主は烏野高校の菅原で、

"ついに大地に彼女ができた!!!"

という台詞と共に、2枚の写真が送られてきた。

1枚目は、何故かメイド服を着て肩に学ランを羽織っているポニーテールの女子の隣で、その女子の口元におにぎりを運んでいる様子の澤村の写真。
そして2枚目は、その女子が柔らかく微笑んでカメラの方を向いている写真である。

"はーーーん??サームラさん、リア充ですかーーー??"

一番最初にそれに反応を返したのは黒尾であった。そしてその後に、木兎や海が続く。

"かわいい!!ずるい!!"
"文化祭か何かの仮装?"
"そう!今日から文化祭!"

赤葦は菅原の返信を見て、そして、送られてきた写真をもう一度見て、それからトーク画面を切り替える。指先を滑らせて、その写っている本人にこう送った。

"千歳さん、全身写ってる写真ください"

先程の写真、たぶん海は気付いていそうだったが、写っていたのは十中八九、烏野の男マネである諏訪部である。
よく見ればそれが誰だか分かるのに、何故みんな騙されるのだろう。黒尾なんかは、明らかに諏訪部に対して特別な感情を抱いているのに、どうやら気がついていないらしい。

"なんで知ってんの?"

諏訪部から疑問のコメントと共に、菅原との2ショットが送られて来た。身長のあまり変わらない2人。こうして改めて見てみると、日々身体を動かしている菅原の方が諏訪部よりも体格が良いのが分かる。その隣の諏訪部は、服装のせいか、いつもよりも随分と華奢に見えた。従兄弟同士で傍目に見ても仲の良いことの分かる2人は、腕を絡めて身体を寄せて、満面の笑みを浮かべている。嬉しそうな様子が非常に微笑ましく、赤葦は思わずクスリと笑みを漏らした。

「あかーし何見てんの?」

隣で弁当を食べていた木兎が、赤葦が小さく笑ったのを聞いてスマホを覗き込んだ。あ、と思ったが、別に口止めされている訳でもないのでそのまま抵抗せずに先程の写真を見せる。

「あれ?なんで違う写真持ってんの?ん?てーか、その子澤村の彼女なんじゃないの?」

先程、グループの方に"澤村の彼女"として送られて来た写真の主が、赤葦の持っている写真では菅原とくっついて写っているのを見て、疑問に思ったらしい木兎が首を傾けたので、赤葦は写真が送られてきたやりとりを見せてやる。

「え?どゆこと?」
「木兎さん、この人千歳さんですよ」

それでもなぜ諏訪部からこの写真が送られて来たか分からずに更に混乱する木兎へ、特に考えるでもなく真実を告げると、エッ!!と大きな声を出して驚いたので赤葦は思わず耳を覆った。

「これ諏訪部なの??ウソ!めっちゃ可愛いのに??」
「千歳さんは普段からかわいいじゃないですか」
「えー、うん・・・まあ、分からなくはねえけどさー」

信じられない、と声を上げて木兎は赤葦のスマホを奪うと、マジマジと見つめては女子にしか見えないと唸り、そして勝手に指を滑らせる。

「あ、ちょっと」

"諏訪部めっちゃかわいい!他の写真も送って!"

「あかーしも他の写真も見たいだろ!」

咎める赤葦を他所に、仕事をしたと言わんばかりに木兎は得意げに笑う。すぐにスマホを返してもらうと、間を開けずに返信が返ってきた。

"京治は昼まで木兎と一緒なの?"

先程のメッセージを誰が送ったのか容易に想像のついたらしい諏訪部からのそんな揶揄いの言葉と共に、次に送られてきたのは飾り付けられた教室で飲み物を運ぶ諏訪部が写されているものだった。いつもマネージャー業をしている時のような表情が、化粧で装飾されているのが目を惹く。ジッと眺めていると、また木兎が横から覗き込んできた。

「言われてみれば諏訪部だけどさ・・・これ、女の子にしか見えないよな」
「千歳さん身長170くらいだと思うので、実際見たら結構背高くて女子には見えないんじゃないですか」
「いやいやいや、170てこんくらいだろ?全然女子だろ!」

目の前にはいない諏訪部について、けれど記憶と想像で補完しながら木兎とやんややんやと議論する。確かに女の子の格好をしている諏訪部はかわいいけれど、女の子だったら良かったのにとは思わないのは、やはり彼のバレーに対する姿勢や、距離感の掴み方や、掛けてくれる言葉などを2人共もう好きになってしまっているからなのだろう。諏訪部は男子だからこそ良いのだ、多分。それにしても、ポニーテールは頸がよく映える。細いな、と思ってから、いや、頸なんて普段から出ているだろうとハッとした。ちょっと思考回路がおかしくなっているらしい。

「いいな〜文化祭!俺も行きてー」
「そうですね」

"どれもかわいいです、ありがとうございます。次の合宿の時に俺にも女装姿見せてくださいね"
"やだよ、ばか"

木兎の言葉に頷きながら送った返信に連れない返事が来たけれど、それにもやっぱり可愛さを感じるのは何なのだろう。
  とりあえず、次に会った時はその頸に触ってやろうと赤葦は心に決めた。



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