君を咬み殺す3 | ナノ




超えるべき試練
「ツ……ツナ!ていうか……雛香も!」
「10代目!雛香!」
「何あれ……?!」
「ボールになっちゃった!」
 ゴトン、と落ちる針球態。
 ざわつき騒ぐ周囲の前、

「……雛香ッ!!」

 ひときわ焦燥に満ちた声が、鋭く響き渡った。


「……え、」
「なぜ君が……愚かな」
「ダメだぞ雲雀。今球針態を壊したら」
「!赤ん坊」

 球針態へ駆け寄った雲雀の焦りの表情に、口をつぐんだ周囲は驚きの顔で固まる。
 そこへただ1人、何も変わらぬ態度で言葉を紡ぐ小さな人影。

「……これを破壊することはほぼ不可能、内部の酸素量も限られている……だな、雲雀?」
「なっ、」「それじゃあ中の2人は、」

 リボーンの言葉に、一気に青ざめる獄寺と山本。
 その後ろで目を見開いたフゥ太と首をかしげるランボに見向きもせず、リボーンは頷き周囲の懸念を肯定した。

「このままだと、死ぬだろうな」
「赤ん坊!!」

 息を呑んだ獄寺たちが口を開くより早く、雲雀の声が部屋に響いた。

「……君はわかっていたのかい」
「いや、雛香が突っ込んでったのは俺にも予想外だった。まさかツナもろとも閉じ込められるとはな」
「赤ん坊、雛香は救出する。沢田綱吉については請け負ったけど、雛香は不味い。弱っている彼はすぐに呼吸ができなくなる」
「ちょっと前、雛香の首を絞めた奴の発言には聞こえねーな」
「……!」

 次々と展開する2人の会話に、周囲は凍り付いたまま口を挟むこともできない。

「……赤ん坊」
「だがな、雲雀。勘違いすんな。ああ見えても、雛香はヴィーラファミリーの10代目だ」
「……何を言って、」
「あいつがツナとともに閉じ込められたのは……偶然なんかじゃねえぞ」

 珍しく険しい表情をする雲雀に、リボーンはきっぱりと断言した。


「歴代ボスがボンゴレの試練を超えてきたように、雛香にもヴィーラファミリーの超えるべき試練があるはずだ」





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