激突
「……ねえ、何してくれてるの」
くい、と顎を上げた雲雀が、突き刺すような目付きでγを見据える。
「んん、お前は……思い出したぜ、ボンゴレ雲の守護者、雲雀恭弥だ」
体勢を整えたγの背後、ごほ、と掠れた声で咳き込んだ雛香の姿が膝から崩れ落ちる。
「!おっと、」
「かはっ、ハ……」
とっさに手を伸ばし、間一髪で雛香の身体を支えたγの腕に、がっくりと寄りかかる少年。
「おいおい、大丈夫か?」
「っ、か、はっ…、ぐ、」
辛そうに喘いだ次の瞬間、その口から嫌な音とともに赤い液体が溢れ出る。
「……こりゃあ、大丈夫じゃあなさそうだな」
「ねえ」
そこへ発される、
絶対零度の声。
「……いつまでそうしているつもりだい?」
「!」
γが動くとほぼ同時、
放たれるのは、大気も震える凄まじい圧力。
「……ハリネズミとは可愛いがなんてパワーだ……これだけの匣ムーブメントを、よくそんな三流リングで動かせる」
空でぶつかり合う狐とハリネズミを眺め、γは軽く口元を緩めた。
「僕は君達とは生き物としての性能が違うのさ」
アッサリ言い放った雲雀がちらり、目をやるのは、γの支えを無くして地に倒れ込んだ小柄な肢体。
投げ出された手がぴくりともしないのを見、雲雀は微かに眉を寄せた。
同時に、中指のリングが砕け散る。
(……波動に耐えられず、リングが砕けた?)
予想外の出来事に目を細めたγの前、しかし雲雀はなんてことなさそうに、新たなリングを取り出し嵌める。
「……リングを使い捨てにするのかよ」
「さあ、僕らも始めよう」
驚きを通り越し呆れた顔をするγに対し、平然と匣を手に取る雲雀。
その手に握られるのは、10年前と変わらない、銀の凶器。
瞬間、紫と緑の閃光が、眩く激突した。