君を咬み殺す3 | ナノ




激突
「……ねえ、何してくれてるの」
 くい、と顎を上げた雲雀が、突き刺すような目付きでγを見据える。

「んん、お前は……思い出したぜ、ボンゴレ雲の守護者、雲雀恭弥だ」
 体勢を整えたγの背後、ごほ、と掠れた声で咳き込んだ雛香の姿が膝から崩れ落ちる。

「!おっと、」
「かはっ、ハ……」
 とっさに手を伸ばし、間一髪で雛香の身体を支えたγの腕に、がっくりと寄りかかる少年。

「おいおい、大丈夫か?」
「っ、か、はっ…、ぐ、」

 辛そうに喘いだ次の瞬間、その口から嫌な音とともに赤い液体が溢れ出る。
「……こりゃあ、大丈夫じゃあなさそうだな」
「ねえ」
 そこへ発される、

 絶対零度の声。

「……いつまでそうしているつもりだい?」
「!」

 γが動くとほぼ同時、
 放たれるのは、大気も震える凄まじい圧力。

「……ハリネズミとは可愛いがなんてパワーだ……これだけの匣ムーブメントを、よくそんな三流リングで動かせる」

 空でぶつかり合う狐とハリネズミを眺め、γは軽く口元を緩めた。

「僕は君達とは生き物としての性能が違うのさ」

 アッサリ言い放った雲雀がちらり、目をやるのは、γの支えを無くして地に倒れ込んだ小柄な肢体。
 投げ出された手がぴくりともしないのを見、雲雀は微かに眉を寄せた。
 同時に、中指のリングが砕け散る。

(……波動に耐えられず、リングが砕けた?)

 予想外の出来事に目を細めたγの前、しかし雲雀はなんてことなさそうに、新たなリングを取り出し嵌める。

「……リングを使い捨てにするのかよ」
「さあ、僕らも始めよう」

 驚きを通り越し呆れた顔をするγに対し、平然と匣を手に取る雲雀。
 その手に握られるのは、10年前と変わらない、銀の凶器。

 瞬間、紫と緑の閃光が、眩く激突した。





- ナノ -