苦難の最後に
「やったね獄寺!その匣兵器は気味悪いけど!」
「うるせぇよ!このセンスがわかんねぇのかてめぇは!」
見事敵を倒した獄寺に、にこにことハイタッチを迫る雛乃。
それを綺麗に無視すると、それよりてめえの犬の方が気味悪いだろ!と雛乃の手にある匣を指差し獄寺は叫んだ。
「つーかそれなんなんだ!!」
「言ったでしょ、僕の相棒だよ」
「意味わかんねえよ!大体、なんで炎が青色なんだ!」
「……そこまで見てたの?」
正確に言うと藍色だが。
しかし、正直死ぬ気の炎を出すのでいっぱいいっぱいだろうと思っていた雛乃は驚いた。
単純に不思議に思って聞き返したのだが、獄寺はわずかに顔を赤くしぷいっと横を向く。
「見てちゃわりーかよ」
「……や、別に」
いいけど、と言いかけた雛乃の背後で、
突如鳴り響く、けたたましいガラスの粉砕音。
「へっ?!……て、あれはミルフィオーレの」
ガラスを突き破り地に激突するのは、紛れも無い黒の隊員服。
「10代目!やったんすね!」
さすがっす、と喜ぶ獄寺に、雛乃は驚き目を開く。
「……待って!ツナがあそこにいるの?!」
「ああ、さっき笹川を探しに……」
「早く言ってよ!」
慌てて身をひるがえし駆け出す雛乃。
その背を追おうとした獄寺の後ろで、小さく呻く声が聞こえた。
「!お前ら、」
「ん……」
「ごほっ」
ゆっくり起き上がる面々の前、獄寺ははっとポケットを探った。
自分の武器、雛乃の炎、そして山本の首にかかったリング。
「……まさか」
ペラリ、10年後の自分が書いた手紙をめくり。
「……そういう、ことかよ」
獄寺は、口元を引き攣らせた。