ガラス越しにキス 「キス、して…?」 それか、わたしを殺して下さい。と、牢屋の鉄格子の向こうにいるなまえが言う。 「出来るわけないでしょ?」 どっちも出来ないよ。ま、顔は俺の好みだけど…里の罪人と関係を持つほど寂しくないんでね。 「残念です…」 そんなに残念そうな顔してないけど。俺の返事を予想していたのか、当たり前か。 「なまえちゃん何したいの?」 「…そうですね。強いて言うなら"自由"が欲しいです」 "自由"って曖昧ですよね?と笑うなまえちゃん。同族を殺したと疑われている人の言葉とは思えない。 「知ってますか?木の葉って内は固いけど、ある外からにはすごく弱いんです。味方を疑ってなんぼなんですよ?」 ニヤリと笑うなまえちゅんにゾクゾクする。弧を作り笑顔を浮かべるなまえちゃんは怪しいが綺麗だった。 --ちゅっ、 刹那、軽いリップ音と、唇の熱と共になまえちゃんは消えた。立ち上る土煙の切れ間には石壁にできた大きな穴が見えた。 (20110305) |