科戸の風




「……」



今日、初めて人を殺した。同期の中では俺が一番始めに人を殺したことになる。一番始めに中忍になったんだから当たり前と言えば当たり前の話し。何も可笑しなことなどない。寧ろ中忍になってからそういった任務に就くのが遅かったくらいだと思う。



「気持ちわりー」



忍びというものがどういうものか知っていたつもりだった。
人を殺したという、罪悪感。
その気持ちとは裏腹に上手く殺れたという達成感。自分の編み出した術中に見事に嵌って逝った敵を確認した時の胸に湧き上がってきた思い。



「シカマル…?」

「……なまえ先輩」



今日のスリーマンセルの一人の二コ上の中忍の先輩。



「今日はお疲れ様」

「お疲れっス…」

「当分の間は肉類食べれなさそうね」

「…そうっすね」



肉類は別にいい。俺はいつも魚食べてるし。



「護ろうね」

「は?」

「めんどくさがりのシカマルにも"めんどくせー"なんて言えなくなる時がきっとくる。私たち忍びは里を国をそんな風にならないようにするために在るの」


その言葉はまるでそう自分自身に言い聞かせるように呟かれた。なまえ先輩も初めて人を殺した時は今の俺みたいだったんだろうか?



「なまえ先輩、!」


一つの風が俺たちを包んだ。罪や汚れを吹き払うという科戸(しなと)の風のように。



(20110228)
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