マヨラーにご注意 「アンタだろ?」 「……違います…」 「なんでィ、その間はやっぱりアンタだろ?」 この長いエンドレスなやり取りを何時間やっているだろう。言葉と共に殺気の籠もった眼光が痛い。いや、殺気というものがどういうものなのか知らないけど、これは間違いない"殺気"というものだと思う。あぁ、胃がキリキリする。 「はぁ〜いい加減にしなせぇ。こっちは忙しいんです。やってててもやってなくても"やりました"って言いなせェ」 「嫌ですよ!てか、私は被害者ですよ?あなたみたいな人がいるから、真選組はチンピラ呼ばわりされてるんですよ!」 フンっと鼻息荒く口走った私の首には鈍く光る刀が当てがわれていた。チクッと痛んだ首筋にはぬるりとした温かなものが流れる。 「余程その首いらねーみたいだな!」 「やめろ総悟!」 「土方さん、何しに来たんでぇ?」 「刀下ろしてやれ。その娘は白だ」 暫くして、カチャリと下ろさた刀。舌打ちも聞こえたのは気のせいではないだろう。 「悪かったな、これ食って家に帰ってくれて構わねえ」 目の前に置かれたカツ丼だったもの。 「私、殺されかけたんですけど」 「それ外で言いふらすなよ」 さっき私を尋問そして、殺そうとしてた人はいない。真選組一番隊隊長だという彼は舌打ちと共にここ尋問室を去っていった。 「どうした?食わねーのか?」 目の前に置かれたカツ丼だったもの。なにをどうしたらこうなるのかカツ丼だったものの上には大量のマヨネーズがかけられていた。マヨネーズ独特の酸っぱい匂いが空きっ腹にはハッキリ言って毒だった。 「……お腹は空いてるけど」 「うまいぞ!!カツ丼土方スペシャルだ!」 カツ丼が可哀想だ。スペシャルという嬉しいものではなく罰ゲームだ。しかし、空きっ腹に食べ物の匂いはそそられる。さっきまで息も出来ない殺気に耐えていたんだから尚更。箸を持ち恐る恐る黄色いものを避けつつ食べてみる。 「……!」 「どうだ?うまいだろ!」 食べれなくはない。元来マヨネーズは食べるものだただ量が頂けない。 「ちょっとマヨネーズが多い気がしますけど…まあ…はい、美味しいと思います」 「おぉ!そうか!!まだあるぞ!本当にすまなかったな遠慮するなドンドン食え!」 攘夷活動のゴタゴタに巻き込まれたことなんてもうどうでもよかった。このマヨネーズ地獄から助けてくれ。完食するまで土方は私を放してはくれなかった。 (20110210) |