空っぽでした




「………、」

「…な、なに」



沈黙と視線に耐えきれずアルフォンスは少女と視線を交わす。



「何で鎧の中空っぽなの?」

「え……」



町でばったり会って見つめ合ったと思ったらこの質問。アルフォンスは内心驚いたが表情のない今の彼は声色に注意さえすればいい。今限りの出会いの少女に自身の生い立ちを話せるほどアルフォンスの生い立ちは簡単なものではない。



「何言ってるの?僕は鎧を着るのが趣味なだけさ、」



そんな訳ない。鎧を着るのが趣味だなんてどこの変人だ。生身の体で四六時中鎧な人なんてそうそういないだろう。



「……」

「……」



少女の視線が痛い。つくならもっとマシな嘘をつけばよかった。だが、今さら、遅い。


--コンコンッ


「!」

「やっぱり空洞」



何で?という素直な少女の双眼が鎧の中を僕を見つめる。



「カッコイイねー、この鎧!」

「あ、ありがとう」



ニッコリ笑って走り去った少女。
あぁ、鎧じゃなかった。少女は僕に話しかけてくれてたのに。何も感じないといってた鎧の僕だけど、無いはずの胸が締め付けられた気がした。



(20110208)
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