その程度の覚悟




「バカだな…俺」

「兄さん、さっきからそればっかりどうしたの?」



エドワードは数時間前の自分に後悔していた。今ならなんであんな言葉を言えたのだろうと思う。



「なまえに」

「なまえ?」

「……軍を辞めろ。闘うなと言っちまった…」

「……うん」

「あいつはさ……俺なんかより頑固でさ、根性もあるのにな……でも、それでもそれは本心なんだ……」

「……兄さんはさ、なまえが好きなんだね」

「は?ちょっ、アルフォンス君??」

「なんだよ兄さん、やっぱり自分の気持ちに気づいてなかったんだ!」

「バババッキャロー!俺はだな…‥その、」



ふと思い出すのはあいつの笑顔。あいつには軍は似合わねー。人なんか殺せないし(ま、俺もアルもだが)。人造人間も殺せない。そのくせ、俺たちを必死に守ってくる。



「なぁ、アルフォンス」

「なに?」



分からん。全くもって分からん。この胸の締め付けは……もしや病気!?



「あ゛ー鬱陶しいなっ!なまえに直接会って話せばいいだろ!バカ兄!!」

「バ……アル、反抗期?」



急に怒り出したアルフォンスは俺の頭を小突く。しかし、鎧というのでかなり痛い。



「バカっ!縮んだらどうすんだよ!」

「バカ兄!なまえの気も知らないで!」

「は……」



なまえの気持ち?そんなの知らねーよ。
でも、いつも傍にいてくれたなまえは俺たち兄弟と共に力を学び、旅をし、今や共に敵陣真っ只中にいる。それが俺は嫌なんだ。



「なまえが言ってた……"エドはムチャするアクセルだから、私がブレーキにならなきゃ"って」

「なっ!!」

「"アクセルとブレーキって隣にいなきゃ意味ないんだよ"だってさ。虫も殺せないあのなまえが言ってた」



弟の言葉を信じないんじゃない。信じたくないんだ。じゃあ、なにか……なまえがあんな泣きそうになりながら頑張ってんのは俺の為って……?



「僕じゃね…だめなんだ、」

「アル、」

「だから決めた。なまえを守るって……兄さん、なまえが怒った理由わかるでしょ?」

「……」

「兄さんの隣にいたいんだ。兄さんを守りたいんだ。だから、なまえは頑張ってる。……それを、兄さんは否定したんだ!」



珍しく怒っている弟。でも、怖いんだ…守り抜けるか。そりや、俺だって傍にいたい。



「、なまえのとこ行ってくる」



部屋を出る時感じた弟-アルフォンスの視線は俺の背中に突き刺さる。おいおい、そんな睨むな。
……なまえはなまえの覚悟がある。俺は………

纏まらない頭を抱えなまえのもとへ。



(20110205)
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