人ごみで見つけた、




「なまえ…?」



人混みの中から見つけた懐かしい彼の声。出来るなら無視を貫き通したかった。だけど、そんな思いとは裏腹に私の体は気持ちに素直で彼の声のする方へ向いていた。



「やっぱりなまえだ!」

「ミ、ナト……」


「卒業以来だから五年ぶりかな?」

「っ、そ、だね…」



ミナトは私が好きだった人。“だった”と過去形にしてしまったが5年経った今も好き。



「なまえ綺麗になったね」

「///…ミナトはかっこよくなったね」

「はは、そう?ありがと」



綺麗だなんて言われたことなくて、その言ってくれた人はミナトなわけで…実は5年前に私は振られてて……



「!、その荷物…引っ越してきたの?」

「あ、うん。どーしても忘れられない子がいて、ね」



ズキン、胸が痛んだ。心臓が勝手に縮こまって無理矢理体中に血を送りだそうとする。
5年前の卒業式に私はミナトの靴箱に手紙を入れた。人生で初めてのラブレターというものを。でも、5年間ミナトから返事が来ることはなかった。まさか、こんな風に逢うなんて…



「そ、なんだ……その子には出逢えた?」

「うん」



ズキンズキン、と痛む心臓。声も震える。でも、ミナトの前では絶対に泣かない。ミナトには私は元気で明るい女の子として覚えててほしい。



「そっ、か……よかっね、」



笑え笑って私。なんで声なんか震えるのよ!ちっとも泣くことなんて、ないじゃない……



「やっと、なまえに会えた!」



そう笑うミナトは昔とおんなじ笑顔だった。自分の口で会って伝えたかったんだ……わがままでごめんね?
申し訳なさそうに私に語りかけるミナトに私は気づいた。ああ、なんだ私とミナトは……とっくにもぅ、

(実はせっかちな私は名前も書かないでミナトの靴箱にラブレターをいれて、返事をもらってなかった、という)


(20110119)
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