鉢屋くんの場合



「おっ、名前」

「げ、鉢屋…それより苗字さんと呼びなさい苗字さんと」

「一緒になって女の子の好みの話をするような人をそんなふうには呼べないなあ」

「うっ…ユキちゃんだけは譲れないんだから」

「あのつり目堪らないよな」




鉢屋はにやりと笑みを浮かべた。
今日は休日なので、皆各々やりたい事をやっている。わたしにも休日は与えられているが、特にする事も無いので適当に歩いていた。

そしたら鉢屋が居たのだ。それも洗濯しているらしい。腕を捲ってしゃがみこみ、泡だらけの桶に手を突っ込んでいる
わたしはその隣にしゃがみこんだ。




「…鉢屋もちゃんと洗濯するのね。不破くんにお任せして怒られてそうだけど」

「偏見だな。この通りしてるさ」

「ふうん…」




じゃぶじゃぶと洗濯をしている鉢屋というのも新しい。
なんだか傍若無人にやりたい放題なイメージがあるのできちんとやっていると違和感だ。しかし学園で見ると不思議ではない。実家が近い者に限り例外だが、大抵自分のものは自分で洗濯しなければいけないのだ。


「あー洗濯ってつまらん…なぁ、名前。」

「わっ…泡ついたまま!ええっ」



桶を眺め、間の抜けた声で悪態をついた鉢屋は急にこちらに嫌な笑みを向けた後、わたしの手を掴んで桶に突っ込んだ



「何するのよ!」

「洗ってよ、ほら」

「ちょ、ちょっとっ…」



鉢屋はそのままわたしに布を握らせて洗濯板に擦り付けた


でもちょっと待て。こいつの制服は青。私服も水色。
しかしどうだ。桶に入っている布、今握っている布は…





「あ、あああんたね!これ褌じゃないの!!」

「うっわ、ちょっと興奮してきた」

「ぶっ!ふざけんな変態!あんた誰でも興奮してんじゃない!」

「おっと聞き捨てならないなぁー私が節操無いみたいに言うなよ」

「実際無いだろ!い、いいから手、離して!」

「かーわいー慌てちゃって」

「い、意味わかんない顔近い!鉢屋の好みはユキちゃん路線でしょ!」

「好みはな。でも好きなのは名前みたいな子かなー。年上なのに褌握って顔真っ赤にしちゃう」

「冗談も大概に…」



急にふざけた雰囲気が消え去って、鉢屋は真面目な顔つきになった。
わたしも思わず息を止めて近い鉢屋の目を見つめて、しまう




「…冗談なんかじゃ」

「…さぶろう?」

「げ」

「?」




真面目だった雰囲気が一変、気温が下がった。
しまったという顔で固まった鉢屋の後ろには、仁王立ちの不破くんが、いた




「…不破、くん」

「雷蔵…」

「…ねぇ、三郎。僕の褌一枚足りないんだけど?」

「え?知らないなぁこれは全部私の…」

「さぶろう?」

「…ら、雷蔵のだって全部含めて私のなんだ!!」

「気持ち悪いよ鉢屋」

「ちょっと三郎一回死んで」





不破くんに気をとられてわたしの手を離した鉢屋の頬をおもいっきり殴ってやった
泡でぬめって気持ち悪さ倍増。後の処理は不破くんに任せてわたしは足速にその場を去った



鉢屋のお願い→雷蔵の褌を握る名前も興ふn

A.変態治して出直してこい
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