竹谷くんの場合





わたしは、午後は大体が掃除に当てられている。
しかし掃除をしようもあまり汚れていないのでいつもぐるっと学園内を回って掃除場所を探していた

今日も例に漏れずずるずると箒を引き摺りながらごみ探しをしていた。
暫らくして飼育小屋が遠くに見えてくる頃、何かが倒れているのが見えた。よく目を凝らしてみて、其れが何なのか認識したわたしは箒も塵取りも投げ出して駆け出していた



「えっ!?わっ!た、竹谷くん!?大丈夫!?」

「う……名前、さん…」



苦しそうに眉根を寄せ薄ら汗をかく竹谷くんは、苦しそうなのにぴくりとも動かないところから麻痺の類の毒を盛られたような症状だとわかった



「麻痺ね、何されたの!?」

「ど、毒虫に…」

「刺されたのね!どうすればいいの?伊作くん呼んでくる?」

「…いや、吸って、下さい。一刻を、争う、どく」

「即効性なのね、わかった、何処!?」

「………」

「た、竹谷くん!?死んじゃだめだよ!」

「く、首です」



いきなり黙るから死んだのかと思って焦って頬をぺちぺち叩いたら首だと白状した。
少し見てみたら右寄りの項が赤く腫れていた



「んっ…」

「うっ…名前、さん」



毒を吸い出す事は初めてじゃなかった。くの一の授業でも仲間が毒矢にやられたりした時の為に取り扱うのだ。
実際吸い出す事で助かる事は多い



「…は、ぁ…これくらいだと思うんだけど、痺れはどう?」

「……だ、だいぶ良いです」

「そう、伊作くんに解毒剤貰ってくる」

「あ、は、はい」



手足が少し動くようだ。それを見たわたしはろくに竹谷くんの顔も見ずに急いで解毒剤を貰いに医務室に行った

水と解毒剤を貰って竹谷くんのところに戻って来たらもう上半身を起こす事ができるようだった



「はいこれ。」

「ありがとうございます」

「…もう、びっくりした…竹谷くん確か生物委員五年目だよね?」

「う…」

「それなのに毒虫に刺されててどうするのよ」



五年も世話をしていて、危険な毒虫に項を刺されるなんて無用心としか思えない。



「だって…」

「だって?」

「あー…えっと…名前さんに吸ってもらいたかった…なんて」

「…は?」



よく見ると竹谷くんは顔が真っ赤だ。しかし、吸ってもらいたかっただなんてわたしの奮闘はなんだったんだという話だ
わたしはふつふつと怒りと呆れが込み上げてきた



「…わたし、本気で焦ったのよ」

「う…はい」

「竹谷くんが死んじゃったら嫌だと思って、必死で、」

「………」

「それなのに竹谷くんはそんなわたしそっちのけで勃たせて?酷いよねぇ」

「…わっ?!だって名前さんが…」

「わかってるわよ、その年頃は馬鹿やっちゃうし元気だし、そっちに興味はあるでしょう」

「……う…」

「…でも危険な事はしないでよ。わたし割と竹谷くんの笑顔、気に入ってるんだから」

「名前、さん……」



しみじみとわたしの名を口にする竹谷くん。我ながら良い事言ったんじゃない?
竹谷くんを気に入ってることは嘘ではない。今はこんな馬鹿やっちゃう年頃だけど、かなり有望株だと思うんだよね



「俺、いつも一生懸命に掃除してるの見てました。」

「…え?」

「だから此処通るのも知ってたし、名前さんは真面目だからきっとちゃんと対処してくれると思ったんです」

「…………」

「謀ったのは悪かったですけど、俺、名前さん好きだから」

「え、えぇっ?」

「好きでもないのに吸われても勃たないし」

「…ちょっと待とうか。此処で何するつもりかな?」

「名前さん、大人しく抱かれてください。好きですから」



迫る竹谷くんに引け腰のわたし。
がっしり腕を掴んでそう言いながらにっこり眩しい笑顔だなんて卑怯だ



竹谷くんのお願い→うっ!毒虫がっ!吸い出してくれますよねー

A.下心目的ならもうしてあげません!
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