鉢屋 計画通り


※現代


「…重い」

「はっはーいやー楽だなー」

「はぁ…最っ低」

「心外だな、じゃんけんで負けた方が二人分持つって持ち出したのそっちだろ」

「うう…それにしても…」



このロングバケーション前日の学生のカバン程ずっしりと重いものはない。それを二人分、二人分、だ。更に私達は久々知のように教科書を毎日持って帰ってなどしていないし、不破のような計画性なども持ち合わせていないので、わたしの腕はちぎれそうだ



「ほ、ほんと重い…なんで家隣なのっ!結局家までじゃん!」

「はいしゃきしゃき歩くー家見えてきたかんなーもうちょいー」

「むっかつくなー!」



三郎と幼馴染みのわたしは、ふー此処でお別れだねー重かったーということは無くて必然的に家まで持っていく事になっていまうのだ



「はい!もう家でしょ!」

「部屋まで」

「……は?」

「へ、や、ま、で」

「…最低、最悪、そこまで扱き使うの」

「いらっしゃーい」



にっこりとドアを開けてくれたけど、ちっとも嬉しくない。
小さい時からよく遊びに行っていた見慣れた家だ。三郎の部屋へ早足で直行して荒々しく鞄を置き、ばふんとベッドに仰向けに倒れた。
なんか腕じんじんするし…明日絶対筋肉痛



「お疲れさん、て…」

「うー…疲れたー」

「もう少し足閉じろよ」

「えー?わたしの計算だと見えてない筈ー」

「はっはー焦らしは計算上だと?」



そう言いながら三郎はわたしに覆い被さるようにベッドに乗り上げてきた。なにこいつ、盛ってんの?



「…こんなに酷使しといてなにさせる気よ」

「だめ?」

「だめ」

「…まあ今回はかなり大変だったよな。お疲れ、ちょっと寝たら?」



軽く唇にキスを落として、毛布をかけてくれた三郎。なんか優しくて違和感、

三郎は笑顔を浮かべてからふいっと背を向けて、手近の雑誌を捲り始めた。



「……」

「……」



そうやって引かれると、なんか寂しい。同じ部屋の中に居るのに背を向けられるって、やるせない。
さっきまであんなにだるかった身体も嘘のように重さが消えて、その勢いで三郎の背中に抱き付いた



「寂しい、三郎」

「俺のお姫様は寂しがりだな」

「はー…わかっててやってたでしょ」

「勿論」



雑誌を伏せた三郎は此方に向き直り、ぎゅっとわたしを抱き締めてくれた



「じゃんけん勝ってからぜーんぶ計算通り」

「…三郎に数学で勝てるわけないわよ」



何時も数学は赤点なんだから、9割常連の三郎には適わないの
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